知識経験の強化編、本記事ではお客様の課題に先回りすることについて説明する。
第一印象の強化変において「事前準備と仮説立て」にて触れた内容について深堀りしていく。
お客様は、何かに困っている
結論から言うと
「これ困ってるでしょ?」
とお客様が困っていることをズバリ当てて
「こうすればクリアできますよ」
と、答えを与えること。
これが化学営業マンの最高の姿だ。
我々化学メーカーの営業マンが遭遇するお客様は、何かに困っている。
- 性能を上げたい
- コストを下げたい
- 効率化したい
- 安定供給が必要
お客様は、常に何かに困っている。
そのお困りごとに対して、ズバリ正解を与えて解決できれば、お客様は喜んで買ってくれる。
業界を下から攻める
ではどうすれば、そのようにズバリ答えを与えられるようになるのか。
結論から言うと、それは「実体験に裏打ちされた経験」によって達成できる。
進研ゼミの広告マンガのように
「あっ、これ解いたことある問題だぞ!」
という感触を持ちながら「こうすればクリアできますよ」とお客様に説明する。
そのような知見をたくさん持っている営業マンは強い。
ケーススタディの数が、そのまま力に変わる。
駆け出し営業マンがベテランに勝てないのは、この実践による案件数の差、経験の差を覆すことが難しいからだ。
では、そのような実践経験はどうやって積めば良いのだろうか。
それは業界の下位のお客様で学ぶと良い。
前回の記事(営業としての知見の拡充)において、規模が小さいお客様候補は、儲からないし数量も出ない、という話をした。
もちろん、それはその通りなのだが、経験値を積むという意味では有用なお客様であると言える。
最終的に狙っているお客様がいるとして、いきなり攻め込むことは難しい。
自社の技術部の知見が足りないこともあるし、自分自身の知見も少ないだろう。
そのような状況のときは、無理に業界上位をいきなり攻めるのではなく、同じ業界にいる比較的小さな会社と接触して知見を溜める。
業界のトレンド、業界が抱える問題点、業界内での勢力関係…などなど、情報収集をするにはそこにいるプレイヤーに聞くのが最も良い。
仮にこの小規模のお客様が商売にならなさそうでも、情報収集としてはありがたいので、特に知見がない初期の頃はよく訪問して話を聞いてみると勉強なる。
ただし、無理して商売につなげようとしなくても大丈夫だ。
難しそうならば割り切って、情報入手に徹してもいい。
困っていることは大体同じ
こうして手に入れた業界ならではの情報によって、後に控える本命のお客様との面談で、
「実はこれ困ってませんか?実は以前に取り組んだことがあり…」
と先回りした提案ができる。
例えば、まずは原料に関して
- 法規制され始めた
- 手に入りにくくなった
- 高価になりつつある
これらは購買担当者や技術部担当者が困っていることだ。
次に製品の性能面で
- 現行品よりも性能アップしたい
- 現行品でトラブル発生し、改良したい
- 性能維持しつつコストダウンしたい
- 省工程したい
などがある。
また、生産のための要望もある。
- 複数社購買する必要があり同等品を探している
- 安定して大量生産・供給できるメーカーを探している
- 少量多品種に対応できるメーカーを探している
- 自社工場に近い拠点で、素早く納入ができる
このように生産のための供給体制の充実などの側面でも解決法を欲している場合がある。
これらの問題をうまく解決できたとき、新規開拓ができる。
解決できなければ新規開拓はできない。
自社にできることとできないことを見極めて、把握しておくことはこのためにも大切だ。
上記であげた例は、実はどのお客様も困っていることだから、やはり経験が蓄積すると先回りして
「あ〜そしたらアレ困ってませんか?」
と自然に話を振ることもできるようになる。
第一印象「プロ感」
このようにして業界の情報を集めていき、お客様が困っているポイントを的確に掴めるようになってくると、先回りすることができるようになる。
そのときお客様は
「おっ、この営業マンはよく業界のことを知っているみたいだな。頼りになるかも」
と感じてくれる。
これがあることでプロ感を抱いてもらえて、警戒が緩む。
するとセキュリティレベル4までを素早く解除でき、うまくすればレベル4から5への正攻法での突破もできたりする。
実践の場で成功したこと、うまくいかなかったこと、注意しておくべきこと、法規制のことなどを自分の知見として語れる、ということが大切だ。
自分の得意分野・業界を作っていくのも効率的だ。
未知の領域はどうする?
では、これまで自社がやったことないことや、知見がないことには手が出せないのだろうか。
同業他社もおらず、そもそも自社の製品が使えるかもわからない、世の中に実績がないことは、どうすればよいのだろうか。
そのように全くの未知の領域にチャレンジしていく段階も、将来的にはやってくる。
しかしそのような案件をなんとかモノにすることが、営業マンとして社内の地位を安全にする。
全くの新規案件のときには、斬新なひらめきというよりかは、似たような案件の知見をつなぎ合わせて仮説を立てて、結果として未知の領域を打破できるという形になる。
いわゆるコネクティング・ドットをする。
例えば紙加工の業界では常識だったことが、建材では斬新な製法だったり、逆に建築業界では当たり前のことを、機械加工の分野に応用したらこれまでにないものができた…などである。
このようなことは、確かに難しいし、結局うまくいかないことも多い。
10案件やって、ようやく1つ、なんとか可能性があるかな、みたいなレベルだ。
しかしそういうトライ&エラーの中から、今日自社を支えている商品ができあがってきたはずだ。
だから決して無理なことはではない。
しかしそのためには、広い範囲で多くの知識経験が要ることもまた事実なので、焦らないことも大切だ。
僕の経験だが、3〜4年ほど、様々な案件に揉まれていると少しずつ応用ができるようになってくる。
このことは、次の記事で詳細に説明していく。
続き:厚くなっていく知見
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