前項に続き、社内調整を円滑に進めるために、オッチャンを飼い慣らしていくための知見を共有していく。
オッチャンの生態・気質
オッチャンを飼い慣らすにはまずオッチャンについて理解することがまず必要だ。
オッチャンの生態や気質について説明していこう。
オッチャンの気質には大きく「心配性」と「放任主義」の2つの性質がある。
多くのケースではどちらかに比重がかかっており、そのバランスや配分は個々人の経験に左右される。
極端な、10:0で心配性もしくは放任主義である人ももちろんいるが、多くの場合は7:3とか8:2などのバランスになる。
どちらかと言えばベースはこちらかな、という形で偏っているはずだ。
例えば先天的に放任主義ベースの人が、経験や失敗の中で学習し、後天的に心配性の要素を身につけた場合である。
もちろんその逆、心配性ベースだけども意図的に放任主義を取り入れている場合もある。
しかし無意識下のベース気性は変わらないので、どちらがベースなのかがポイントになる。
そのためまずは、直属の上長が心配性ベースなのか放任主義ベースなのかを観察してみよう。
なにかと報告を求めてきたり世話を焼いてくるタイプは心配性、そういうのがないのが放任主義だ。
この2タイプの対処法を説明する。
心配性オッチャン
心配性オッチャンはどういう点で心配性なのか。
それは「自分が怒られるのが嫌」という強い気持ちから来る。
もちろん誰でも怒られたくはないのだが、このタイプは怒られるのを特に恐れているという性質がある。
このタイプは「知らない」「聞いていない」を強く嫌がる。
これはもちろん生来の気質もあるし、これまでの経験で
「なぜ部下の行動を把握していないんだ」
とか
「なぜこんなになるまで気づかなかったのか」
などと怒られたことがあるから、状況や事態を把握していないことに強いストレスを感じる。
そのためこのタイプはいわゆる「ホウレンソウ(報告連絡相談)」を求めている。
オートマチックよりもマニュアル操作を好むタイプでもあるので、なるべく全ての情報を知りたいと思っているし、情報量が少ないと不安になる。
部下が勝手な行動や判断をしないか、とても心配している。
世話焼きなお母さんのような気質があり、よく言えば面倒見が良い上司や先輩と言える。
メールは全部CCに入れる
そんな心配性のオッチャンを安心させ喜ばせることは簡単だ。
全ての情報を入れてあげればよい。
仕事に関して秘密は一切なく、全ての情報を共有する。
具体的には、顧客や社内の連絡メールには全てCCで上長にも送る。
「全てCCに入れたら上長は大変なんじゃないか」
と思うかもしれないが、心配性ベースのオッチャンであれば何の問題もない。
このタイプは部下からの連絡メールCCに全て目を通すしそれを面倒くさいなどとは思わない。
むしろ「情報共有ができていて好ましい」と思い、とても安心する。
心配性オッチャンは、基本的に自分がプレイヤーになることを望む気質でもある。
監督になるのではなくプレイヤーとして駆け回りたい、槍を持って最前線で戦いたい、そんな生き方が好きな、マメな気質のオッチャンがこのタイプである。
指示を逐一、仰ぐ
心配性気質のオッチャンは、自分が司令塔となり、部下に対して具体的な指示を出したいと思っている。
もしくは、部下から「いかがしましょう」と聞かれて、指示を出したい。
つまり部下に勝手な行動はしてほしくないのだ。
それは「事前に相談してほしい」という言葉になって現れる。
とにかく「知らない」「聞いていない」「自分のコントロール下にない」をとても怖がるのが心配性オッチャンなのだ。
そのため一挙手一投足に至るまで基本は相談してから実行しよう。
そして完了したら連絡、報告する。
オイオイめんどくさいな、と思う気持ちはわかる。
しかし心配性オッチャンの心配性っぷりを甘く見てはいけない。
これくらいやってはじめて、安心する。
そしてこの全ての行動を報連相するということを徹底していくと徐々に信頼を得ることができて、少し態度が軟化する。
「それくらいのことだったら、相談せずにやっちゃって良いよ」
という言葉が出始めたら、軟化のサインだ。
「コイツは報連相するから危ないことにはならなさそうだ」
という安心感を持ってもらえたら、テイミング完了である。
放任主義オッチャン
放任主義のオッチャンは、その名の通り放任主義であるので、基本的に部下の行動に関心が薄い。
勘違いしてほしくないのは、この放任主義オッチャンは「行動」には無関心だが「結果」にはうるさいということだ。
「プロセスは好きにやって良いから、ビジネスとしての成果はちゃんとしろよ」というスタンスである。
これはビジネスパーソンとしては一流の気質であると言える。
ビジネスにおいてはプロセスよりも結果が重視されるという価値観は、営業職として適した気質であろう。
心配性オッチャンとの違い
前項で解説した「心配性オッチャン」はこれに対して「プロセス」「過程」「行動」を重視する。
こちらは営業的というよりも、工場や作業現場において重視される気質だ。
事故やトラブル、大きなミスを防ぐという意味で有用な気質である。
そのため営業職として最適な気質であるとは言い難いが、できなくはない。
「管理」はできるからだ。
そして心配性オッチャンも「結果」について関心がないわけではない。
その「結果」については自分自身の責任であると強く思っているから、心配性オッチャンは心配性になり、その過程をコントロールしようとしてくるのだ。
対して放任主義オッチャンは結果さえ良ければ過程はあまり問わないし、途中で干渉もしない。
悪く言えば放置である。
そして結果が出ないときはどう考えるかと言えば、その部下に営業の適性がなかったと捉える。
部署移動や、既存顧客の対応を専門にやらせるなどの配置換えをして対応していく。
これは一見ドライな考え方に見えるかもしれないが、やはりビジネスパーソンとしては優れている。
適性のない人に向いてない仕事をさせるのはお互いに不幸であろう、という考え方をしているからだ。
限られた経営資源を適切に配分するという意識があるのが放任主義オッチャンである。
対しての心配性オッチャンはなんとか部下を合格点まで引き上げようとする。
適正がない者を訓練して鍛えて、落第しないようになんとか一人前に育てようとする。
これは一見すると熱血指導、部下思いの上司ということになるが、全体的な視点に立てば非効率である可能性もある。
この視点の違いも放任主義と心配性のオッチャンを分けている考え方のクセといえる。
さて、そんな放任主義オッチャンを手懐ける方法は、自律駆動型戦闘ロボットになることである。
自律駆動型戦闘ロボットこそ至高
ここまで述べてきた通り、放任主義オッチャンは成果に注目しているから、その途中のプロセスを重視していない。
重視していないので、そこに関して「報連相」されても
「それはどうでもいいから成果出せるように進めて?」
としか思わない。
放任主義オッチャンに「こういう状況なのですが、どうしましょうか」と相談をしても
「キミはどう考える?」
と試してくることもあるし
「そんなの相談するまでもなく、成果出すならこっちではないか?」
と指示のようなアドバイスのような意見を出してくることもある。
ここで注目なのは、放任主義オッチャンの場合には「指示・命令」はほぼなく「アドバイス」「意見」の形になることが多い。
「こうした方がいいんじゃない?」
「この方が儲かると思うよ」
という回答になり、部下の身分としては
「えっそれを私が判断するんですか?」
と思うかもしれない。
放任主義オッチャンは、成果主義でもあるし、自身がそのように働いてきたから、指示や命令がキライな人が多い。
そのため自分が上長の立場になった時に、無意識のうちに部下に指示命令をしない傾向がある。
このタイプは「仕事は自分で考えるもの」という意識が強い。
したがって放任主義オッチャンに対して報連相をすることはあまり意味がないし、心配性オッチャンと同じ対応をするとかえって反感を買ってしまう。
なぜなら放任主義オッチャンは「自律駆動型戦闘ロボット」を求めているからだ。
そのため基本的には報連相は不要で、勝手に成果を上げてくれば十分と捉えられている。
しかしこの上長のさらに上司が心配性オッチャンだったりすると、部下の動向を全く把握していないというのも問題なので、気にしてくるパターンも多い。
そのため放任主義であっても軽い報連相を求めてくる場合もある。
この場合、報連相は「軽め」にすることが大切だ。
「こういう状況でこうしようと思ってますが、いいですよね?」
「アレをやった結果、こうなりました」
という形で許可を得る・耳に入れておく程度の報告連絡相談であれば放任主義オッチャンにとっても「苦しゅうない」。
繰り返すが放任主義オッチャンは自律駆動型の戦闘ロボットが自動で戦って成果を上げてくることを望んでいる。
そのためいちいち「どうしましょうか」と判断を委ねたりお伺いを立てると
「考えるのめんどくさいな…自分の考え方がないのかコイツは」
という思考回路となる。
放任主義オッチャンはその性格的に、大雑把な人が多く、細かい計算が苦手なタイプが多い。
また勉強が好きでなかったり、綿密な計画立てが苦手なタイプでもあるので難しい説明は頭から煙が出てしまう。
難しい説明は彼の自尊心を傷つけてしまう場合もあるので、気をつけよう。
そのためやはり、放任主義オッチャンの部下となったら自律駆動型戦闘ロボットになって成果を持ち帰るのだという意識で仕事に取り組むのが自分の精神衛生上も良い。
続き:オッチャンテイミング2
コメント