本記事は、被購買力を支える重要パーツ「知識経験」の強化編の中核となる。
知識経験の強化編としてはここまでで、
この2つを説明した。
営業としての知見の拡充をすると、営業マンとしての効率がアップしつつ、お客様への第一印象力がアップする。
お客様の課題を先回りできれば、案件のスピードアップはもちろんのこと、やはりお客様からも信頼される。
これらを支えるのが、本記事「厚くなっていく知見」だ。
化学業界ならでは
僕はこれまで、様々な発信の場において
「化学業界」が良いと説き、特に「化学メーカー」の営業マンをすることがお勧めだと述べてきた。
なぜなら
勝手に毎月売れる
という、他業界ではあまりない特性があるからだ。
化学品という商材は、一度スペックインしてしまうと、簡単に切り替えができない。
たとえ同じような品物があって代替可能であっても、その化学品を作っているメーカーを変えてしまうというのはかなりのリスクを伴うからだ。
その辺は、こちらの記事にて詳細に述べた。
そんな化学業界というのは、一般消費者は知らないが、我が国の基幹産業の一つであり、歴史が長い業界だ。
そしてその特性として、技術が抜本的にアップデートされることが少なく、一度覚えた知識がそのまま蓄積していく。
ITや金融は、何かと革新的アップデートがあったり、時代にそぐわなくなって仕組みが変わったりして、新たに勉強し直す必要があるのだが、化学にはそれがほとんどない。
特に、現行存在している化学メーカーが取り扱うものとは、汎用品であり、その枠の中でわずかに改良していく程度である。
そのためずっと同じ知識を使い続けることができて、経験が溜まった分、そのまま強くなれるのだ。
キツい営業、ラクな営業
なお、他にも同じように知識が積み上がっていく系の職業は、存在する。
建築などもそのひとつだ。
基本的に、大昔から存在するような商売に関しては、同じく風化しにくい。
ただし、ラクして儲かる要素があるかは別だ。
僕は建築業の営業もしていたが、この業界はとにかく安く買い叩かれるので、ラクして儲けることができない。
競争も激しい。
キツい営業とラクな営業は確実に存在する。
(なぜキツいのかの説明はこちら)
他にも、不動産オーナー会社などもラクな業種ではあるが…
就業できる実現可能性を踏まえて考えるならば、やはり化学メーカーの営業職というのは狙い目だ。
知見のロスが少ない
そんな化学メーカー営業職には、年収そこそこでお気楽、というだけでなく、この「知識の蓄積」という特性がある。
この「知識の蓄積」が利くために、化学メーカー営業マンは年を追うごとにラクになり、経験年数がそのまま力になる。
その割合が、他の業種より高い。
他業種が多少の「ロス」をしてしまうところ、化学メーカーはほとんどロスなく、その知見を蓄えていくことができる。
案件に当たるたびに
「へ〜、この現象を防ぐにはこれと一緒に使えばいいのか」
「うわ〜こういう保管すると変質しちゃうんだ」
と、ケーススタディを積み重ねて、積み重ねて…
2年ほど取り組んでいると、基礎的な知見が身についている。
そして3〜4年が経過する頃には、ちょっと高度な内容も理解できるようになってくる。
それは、各々の案件が点と点でつながって
「あの時うまくいかなかったのは、これのせいか!」
とわかったりする。
このように、過去の失敗も、成功も、残さず血肉にできるのが化学メーカーの営業職なのだ。
もちろんどのような業種にも、このような蓄積はあるだろう。
ただ、時代遅れになってしまったり、革新により使えなくなる知見は、ロスになってしまう。
100勉強したうち、10がロスになってしまうところ、化学はそのロスがほぼない。
その知見を武器にして、新規開拓に当たっていけるのだ。
実体験こそ最強
そしてそのような、実戦の中で培った知見こそ、お客様は欲している。
机の上で勉強できる知識は、誰でも手に入る。
そうではなく、実際の運用現場を知っていたり、開発段階で発生するトラブルを熟知していて、落とし穴を未然に塞いでくれる営業マン。
これをお客様は欲している。
「聞けばなんでも教えてくれる営業マン」
これが理想の形だ。
そこにたどり着くにはどうすれば良いのか?
その答えは簡単で、
- たくさんの案件に取り組む
- 都度、勉強する
この2つさえ頭に置いておけばいい。
そうすれば、あとは時間の問題となる。
料理みたいなもの
日々、降って湧いてくる案件に対応し、わからないことは自社の技術部に聞いたり、もっと基礎的なことならウィキペディアを読んでみる。
ここで大切なのは「一度勉強したら長く使える」という意識を持つこと。
「俺は営業だから、難しいことはわからなくていいんだ。技術に振ればいい」
とか
「俺は文系だからわからないのは仕方がない」
と開き直ることだけはダメだ。
ただ、いかに化学について詳しくなるといっても、研究者になれといっているのではない。
複雑な計算などできなくていいし、構造式を覚えるまでいかなくていい。
「これとこれを混ぜると、こうなる」
「これとこれは一緒に使えない」
「これは高価だけど性能が高い」
「これは高性能だけど、ちょっと色がついてしまう」
これくらいの解像度で十分だ。
それだけでも十分に戦えるし、お客様もこのような実践の現場での知識を求めているのだ。
まさにお料理のレシピを覚える、包丁の研ぎ方を覚える、くらいの解像度でよい。
※驚くべきことに、それすらめんどくさがる「並の営業マン」が半分くらいいるので、彼らの意見を間に受けないように。
そんなテキトーな彼らでも、勤務できるというあたり、やはり化学業界はユルいなと思う。
こうして、ロス少なく実践的な知見を身に付けていく。
2年目よりも3年目、
3年目よりも5年目、
5年目よりも8年目の方が知見の厚みは増していく。
これをひっくり返すことは、基本的には不可能と言える。
(先述の、勉強放棄している並の営業マンならば5年くらいで追い越せる)
そのように知見は積み上がっていくものだと理解する。
2年目の自分には全く対応できなかった新規営業先にも、5年目の自分ならば渡り合える可能性が高い。
もしくは、全然商売にならないと見切っているかもしれない。
化学メーカーの営業職は積み重ねこそが力であるとわかっていただけたかと思う。
続き:未踏の領域へ
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