値下げ対策 その1(供給過剰・原価バレ)

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知識習得

営業マンをしていると避けては通れないのが値下げ交渉である。

性能もいい、供給も問題なしとなっても最後に必ず「コスト」が立ちはだかるし、商材や場合によっては性能の前にまずコストありき、の案件もある。

値段が合わなければ検討が無駄になるからである。

本項はなぜ値下げが起こるのか、どうしたら良いのか、について私の知見を述べていく。

買い叩きが基本の商材(供給過剰)

まずは買い叩くのが基本と思われている場合。

この場合は家電量販店で値引きをしてもらうかのように

「もう少し安くならないの?」

と一声掛けるという類の商材・業界の場合である。

これは長い歴史の中で染み付いた風習だ。

「業者の見積は必ず20%叩いて10%引きで妥結するもんだ」

と、値下げ要請するのが当然という商材・業界の場合は、この状況に陥っている場合がある。

需給バランスの崩れ

これがなぜ発生して定着しているのかといえば、それは「供給過剰」の状態が長く続いていたからだ。

つまり需要<供給の状態である。

代わりがいくらでもいる状態だと、買い手が強くなる。

この場合、供給側はなんとか機会損失や在庫過多の状態を回避しようとするので、利益率よりも売上を優先する。

そうなると後は安売り合戦に突入していくし、その安売りが限度を迎えたところからは、金銭ではない「サービス」での差別化が始まる。

サービスとは、即日発送、送料の無料、無償でサンプルを入れる場合もあるし、労務やお客様の業務の代行などがある。

もちろんこれらには材料費や人件費、営業マンの労力というコストがかかっているのだが、これらをオマケとして無償で提供することにより、全体の「価値」を上げて、総合的なコストパフォーマンスでの勝負をしようとする。

しかしながら、これらのサービス活動は、「販促費」など全体の経費に計上されたり、もしくはそれすらもされずに営業マンのサービス的タダ働きになってしまう場合もある。

なかなか数値化は難しいのだが、これらは明らかにコストがかかっていて、本来ならば売り物にしても良い、追加料金を請求しても良い類のサービスである。

それを無償で行うという、実質的な値引きによって、安売り各社は価格競争を激化させていくのだ。

値下げ回避ポイントの有無

ここで再度、なぜ買い叩かれてしまうのかを考えてみよう。

それはひとえに供給側(サプライヤー)つまり競合他社が多いから発生しているのである。

そして、その数多くいる競合他社に対して、値段以外の強みがない企業は常に価格競争に曝されてしまうのだ。

もし、自社に特許があったり、特殊製法によって他社が真似できないとか、長年の実績があり仕様に組み込まれていて代替が難しいとか、そういう強い条件があったらどうだろうか。

この場合は価格競争に曝されず、適正な利益を載せて販売ができるのではないだろうか。

家電量販店やドラッグストア、スーパーマーケットが安売り合戦をしているのと同じで、「代わりはいくらでもいる」と思われて、そしてそれが実行できる状況である限り「相見積もり」をされて天秤にかけられ続けるのだ。

原価がバレている

次は「原価がバレている」場合、これも値下げ要請を受けやすい。

例えばキャベツの千切りをお店で買おうとして、1パック千円だったら

「うわ高いな」

と思うのではないだろうか。

それはあなたがキャベツ1玉の値段を知っているからだ。

キャベツ1玉、高くても200円ほどなのに千切りにしたら千円になる、しかも量は減るのに、手間賃にしても高すぎる、と感じるのではないだろうか。

これと同じことがBtoBビジネスでも発生する。

例えば建築現場や、システムエンジニア、掃除の代行業、サービスの派遣業など人力×時間で見積が成立する場合には顕著だ。

人件費は一人あたり1.5万円、4人ずつ3日間ということは18万円。

材料費が7万円(ネットの通販サイトで調べて合算)、諸経費で多く見積もって1万円合計26万円、これに利益を4万円認めれば4/30で粗利率13%か。

これだけあればやれるだろう、と計算をされてしまうのだ。

ちなみにこの場合は、本来であれば粗利率は20%はほしいところなので7万円ほどの粗利が欲しい。

つまり7/33で21%の粗利率で見積提示していた。

しかしこれをお客様の勝手な計算で、30万円にされてしまった。

3万円値引きさせられてしまったということだ。

これはお客様が原価を知っているから発生する。

人件費が1.5万円ということ、材料費を調べられる環境にあることが原因である。

そこそこ当たっているのが痛い

そしてこのお客様の設定した粗利4万円、売上30万円という金額は、まさにギリギリを突いてきている数字なのである。

これがもし、20万円と言われたら明らかに赤字のため業者は受けるはずはない。

しかし粗利13%というギリギリやれてしまうキワキワを適切に突けてしまっている。
これは厳しい。

これはお客様の側に知見が蓄積しているために発生する。

先程の例は人件費のウェイトが大きい労働集約的なケースであったが、設備集約的な商品であっても原材料費がバレている場合には似たようなことになる。

「Aという材料、先日の新聞で値下がり傾向にあると読んだのですが、ということはこの製品、含有率◯%だから◯%くらいは値下げできますよね?」

もちろん自社の購買単価そのものがバレていることはないと思うが、原材料の上がり下がり、その傾向と幅に関してお客様にバレている場合には、そこまで的外れでない額の値下げ要請がなされる。

また、同業他社の中にお客様とズブズブのところがある場合には、リアルな変動幅を教えてしまうので、本当のギリギリを狙われてしまう。

タチが悪いのは、この要請がそこまでマトはずれでもないというところである。

ブラックボックスの有無

これはメーカーの場合には単純な構成であるものがとても弱くなる。

例えばAという材料をBという材料に、Cという接着剤で貼り合わせた製品というのは、原料費の想像がつきやすい。

そこに加工費や運送費を乗せて、最後に利益これくらいあればやれるやろ、といういわば「指値」がされてしまうからだ。

対して、その構成が複雑で、また加工プロセスに特殊な装置やレシピを使う場合にはこの手の値下げは受けにくくなる。

例えば、

Dという材料を加工して化学反応させるとEになり、それをさらに特殊装置で加工しつつFと化学的に反応させるとGという製品になる。

というようにその加工プロセスにいくらかかるのか、もしくはその原価がわかりにくいものである場合には値下げは受けにくくなる。

いわゆる「ブラックボックス」のようなものがあると、追求しにくいのである。

もちろん、このブラックボックスを見破れる知識を持つ人が相手になった時には追求はされてしまうことはある。

しかしその工程が特殊で、他では再現が難しい等の理由があれば、やはり代替は難しくなる。

これらのことをふまえた上で、話を戻すと、材料や人件費の値段がバレている場合には値下げを受けやすいことはわかっていただけたかと思う。

続き:値下げ対策その2:アフォーダビリティ

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