飛び込み営業の作法(実践編)

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接近戦

前項に続いて、飛び込み営業についての技術について説明していく。

パニック拒否反応

前項の通り、飛び込み営業というのは「される側」にとっては突然のことで、言い方を変えると不意打ち・急襲を受けるということになる。

予告なく、事前の連絡なく襲撃をしてくるから、瞬時の判断を求められ、パニックになり拒否反応を起こす。

得体がわからない相手なので大変なストレスも感じる。

そのため、ひとまず追い返したくなってしまうのだ。

この「とにかく帰ってほしい」という心理状態の時に、長い話をして自分のことを理解してもらおうとしても、なかなか難しい。

「とにかく帰ってほしい」という精神状態の相手は聞く耳を持っていないからだ。

ここで無理して粘ると、嫌われてしまうし最悪、警察を呼ばれる危険もある。

そのため自分が何者で、どういう目的で来訪するのかを事前に連絡しておくと良い。

具体的には紙媒体を用いて行う。

自社の会社説明のパンフレットやチラシに、自分の名刺を付けて、付箋に手書きで短いお手紙を書き、クリアファイルに入れて1セットとする。

このセットを受け取った相手は、

  • 会社名
  • 営業マンの名前
  • 企業概要
  • 何屋か
  • 何の目的か

この辺りを文字媒体で、時間をかけて情報を吸収して理解することができる。

「文字媒体」「時間をかけて」がポイントである。

先述の通り、飛び込み営業をして急襲をかけるというのは、相手に冷静な判断をさせにくい。

瞬時の判断を強要してしまう。

この場合、口頭で

「わたくし◯◯株式会社の田中と申します。

弊社〜〜のメーカーでして…」

と説明していくのだが、この短い10秒ほどの自己紹介の中だけでも

  • 会社名
  • その営業マンの名前
  • 商材

このように3つの未知の新情報が出てくる。

未知の情報のラッシュ、波状攻撃を受けると人間は理解が追いつかなくなりパニックに陥る。

そしてそのパニック状態の中で「要る・要らない」を瞬時に判断せねばならなくなる。

これは大きなストレスがかかる。

多くの人はこれに耐えられず、

「訳わかんないし怪しいから、ひとまず帰ってほしい!」

と反射的に強く感じてしまうのだ。

そうなるともう聞く耳はない。

このとき、誰もが知っている大企業やその関連会社などであれば不信感は和らぐのだが、飛び込み営業するという前提がある以上、そうでもないかと思う。

情報を事前に与えておく

この「未知の情報の急襲・波状攻撃」を事前に防ぐのが先述のクリアファイルで渡す資料セットだ。

これを受け取った相手は、文字媒体という圧力のない情報伝達機能から情報を得られる。

「初めて聞く名前の企業だが、創業30年でちゃんとした会社っぽいな」

「主要取引先は…ここか、ちゃんとした企業と取引があるようだな」

「ニッチな製品を作っているな。この製品はちょっと興味あるかもしれない」

「この営業マンは田中という名前か。下の名からして、男性だな」

この辺りの情報を「時間の制限なく」この相手は情報を仕入れることができる。

さらに慎重な担当者であれば、ネットでホームページを見たり、帝国データバンクで詳細な情報を調べたりもする。

こうして事前情報を十分に入れて、後日再訪した場合にはこのような対応になる。

「資料読ませてもらいました。その中では◯◯という商品が気になったのですが…」

「資料読ませてもらいました。申し訳ないのですが、ウチはもう決まった取引先から買っていて新規に切り替えるのは難しいんですよ。話だけなら聞けますが期待しないでほしい」

「資料読んだけど、ウチでは使えそうなものは無かったなぁ。申し訳ないね」

「資料置いておいてくれた業者さんだよね。あまり読み込めてないからちょっと話聞かせてくれる?」

このように、うまくいくか、見込みがないか、いつかはチャンスがありそうか、面談に進めるかはもちろんケーズバイケースであるが、「とにかく帰って!」というパニック拒否対応はされにくくなる。

とにかくお客様に冷静に対処させるか、考える時間を与えることが大切だ。

読ませる工夫:手書きのメッセージ

前項の通り、お客様に事前情報を入れてもらうには資料に目を通してもらう必要がある。

多忙な人も多いので、目を通しきれないケースもある。

また常日頃から、このような営業を受けていてうんざりしているケースもあるだろう。

この手の営業は、主に生命保険やウォーターサーバーなどのまさにドブ板営業的な業種が繰り返していることもあり、

「また生命保険か?」

とノールックで捨てられるリスクもある。

これを防ぐのが「手書きのメッセージ」である。

綺麗に印刷された人工的なパンフレットは、読む気が起きないものだ。

そいういうパンフレットは血の通っていない既製品であるし、どうせあちこちでばら撒いているんだろう、と思う。

ポストに入れられているダイレクトメールのような感覚だ。

そのため表紙に手書きの文字でメッセージを書く。

これでただの紙にあなたという人物の血が通う。

そうなると格段に読まれやすくなる。

手書きの文字というのは、そこにヒトの存在を感じるものだ。

そのため機械が印刷した文字には反応せずとも、手書きの文字はついつい読んでしまうのが人間の習性である。

このときメッセージを書く紙は、大きめの付箋でも良いし、絵柄が入っている小さめのメモ帳や伝言カードのようなものでも良い。

クリアファイルに入れて、まず目に飛び込ませることが大切なので、封筒などに入れる必要はない。

メッセージの書き出しは、相手の名前がわかっていればベストだ。

しかしわからなければ「◯◯ご担当者様」でも良い。

◯◯には化学メーカーの場合には購買や調達、資材が入るし、建築業ならば施工管理や工事が入る。

その付箋やメモに、短くても良いので「手書きで」メッセージを書く。

「◯◯様
お世話になります。弊社は◯◯のメーカーです。貴社ホームページを拝見し、お役に立てるのではないかと思い資料をお届けに参りました。また後日、お話させていただけたら幸いです。
◯◯株式会社 ◯◯」

そして名刺を添えて(同封)しておく。

ちなみにこのとき注意なのが必ずクリアファイルにするということ。

このセットを封筒にいれてしまうと、このメッセージが目に入らないし、封筒の形態だとそのまま捨てられやすい。

また後述するが飛び込みにおいては「門番」を突破する必要があり、その門番を突破するには門番にも内容を見てもらうことが大切だ。

また、先述の例文においては「貴社ホームページを拝見し」という文言を入れてある。

これを入れておくことで「テキトーに飛び込みしているわけではない」感を込めた(もちろん軽くで良いので事前にH Pには目を通しておこう)。

このセットがターゲットに届けば、アポを取れる可能性はグッと上がるし、もしアポが取れなくてもそのお客様が見込み客か否かは後日の電話の時点でわかるので、素早く見切ることもできる。

門番について

飛び込み営業においての最大の障害は、実は担当者様、その本人ではない。

担当者様は、対面や電話、メールなど、どんな形であれ接触さえできれば見込み客になりそうか否かは判定できる。

今は難しいが継続フォローしていればチャンスがあるのか、それとも全く的はずれでノーチャンスなのかはわかるし、これを判定することが市場調査としてはポイントになる。
しかし、それはやはり担当者様と接触できた場合であり、接触それ自体ができないと判定ができない。

接触ができない事態とは、受付や守衛所で止められてしまうパターンである。

特にちゃんとしている大企業などは受付や守衛所のガードが大変に固い。

まず彼らの存在意義としては「アポイントがない部外者を敷地内・社内に入れない」というものがある。

事前に連絡がない者は不審者であり、いかなる場合でも通せない。

それが彼らのお仕事である。

そのため飛び込み営業で訪問して「ご担当者様に会いたい」と言っても「アポイントがないならダメです」もしくは優しい人なら「電話して聞いてみます」となる。

そして電話で聞いてみるパターンの場合には担当者様も「そんな会社知らないな、断っておいて」となってしまう。

もちろんこれは先述の通り事前情報がない状況で瞬時の判断を求められたために起こる反応である。

そして飛び込みの場合には、担当者様の名前がわからない場合も多い。

この状態では打つ手がないので、まずは担当者名を聞き出すのが最初の目的となる。

門番の攻略:低姿勢で情報を与える

そこで、「将を射んと欲すればまず馬を射よ」ということでまずは受付・守衛所の人を攻略していく。

この人々から取りたいものは、とにかく「担当者様のお名前」である。それ以外はない。

誰宛に電話をかけていいかわからない状況では、進捗が難しい。

そこで先述のクリアファイル入り資料集&名刺を使う。

「すみません、私◯◯という会社で◯◯(商材の種類)の営業をしております鈴木と申します。

当然来ちゃってすみません。

今日はこの資料だけ、まず置いて帰りたいと思っておりまして、すみません。

訳わからない会社で申し訳ありませんが、ちょっと読んでみていただけないでしょうか。

今日は資料置くだけで帰ろうと思っております」

このようにペコペコして謝りまくりながら、すぐ帰りそうな雰囲気で資料を渡したら少し後ずさりしながら受付や守衛所の人に接触する。

最初はかなり「引き」の態度で行く。

ただし最初に「自分は営業である」としっかり目的を伝えて、自分の名前を名乗り名刺も置いていく。

これを受けた人は、

  • 「なんだ、営業か」
  • 「しつこくなさそう」
  • 「すぐ帰ってくれそう」
  • 「ペコペコしててかわいそう」
  • 「危なくはなさそうだな」

と、このように感じるので、ひとまずガードは緩む。

この時、自分の第一印象が良く、かつ相手が少し警戒を解いてくれた場合には

「いやこれ私に渡されてもなぁ…担当者に渡しておくね」

と言ってくれたりする。

そこですかさず

「そうですよね…すみません、では次回、ちゃんとアポイントをお電話で取ってから、伺いたく思うので、差し支えなければご担当者様のお名前教えていただけますでしょうか…?」

とお願いしてみる。

ここで相手は

「コイツに教えても大丈夫かな?」

と瞬時に判断する。

このとき、第一印象がポイントになる。

これまで紹介してきたような服装や髪型をして、自分を低く見せるボディランゲージを実行していて、かつ資料+名刺を差し出しているならば「コイツならば大きな問題にはならないであろう」と判断してくれる可能性がある。

そこで「仕方ないな…購買部の高橋さんが担当だから、この資料渡しておくよ」

と「高橋さん」という名前を聞き出せたら門番との戦いの目的は達成だ。

もちろんこれは、自分の第一印象力と、相手の「ユルさ」に大きく左右される。

シビアなことを言えば、守衛所や受付の人は、いかなる理由があろうとも担当者様の名前など決して教えてはいけないのだ。

その規範意識が強いガードの固いお手本のような人は、どんなにお願いしても教えてくれない。

しかしそこがユルい人はポロッと言ってしまう。

そのためガードの固い担当者に当たったら下手に粘らず、日を変えて担当者が変わるのを待つ手もある。

ちゃんとアポを取る

また、いかにガードが固い人であっても、先述のように自分の目的と身分を明らかにして資料を置き、かつ

「次回はちゃんとアポイントを取って再訪したい」

と伝えていれば、ガードが固い門番であっても心を動かすことができる。

その場では担当者様の名前を言えなくても、後日その担当者様に連絡をとってくれて「名前を教えても良いか」と許可をとってくれる場合もある。

この時に大切なのがクリアファイルに入れた資料セットと名刺なのだ。

門番は自分で読み込んだ上でこれを担当者様に送って、

「こういう業者が何度か営業に来ていて、アポを取りたいと言ってきているのですが、いかがしますか?」

と聞く。

このとき、資料や名刺がなければ担当者様は

「うーん、よくわからない会社だし怪しいからひとまず断っておいて」

となるところ、資料が手元にあるために

「こういう商材を扱っている業者なら一度会ってみても良いかな」

「ウチは要らなさそうだから、断っておいて。それでも粘るようなら私から直接断るから、名前教えていいですよ」

というような、ちゃんと考えた上での対応になる。

パニック拒否反応が起きにくくなる。

どの場合であっても、情報をしっかり入れているがゆえに正確な判断が下される点が大切だ。

飛び込み営業は、いきなり行って、いきなり商談するイメージが強いかと思うが、そんな無茶はこの現代社会、ましてやBtoBビジネスにおいては通用しない。

個人宅に訪問して保険やウォーターサーバーを営業するならともかく、BtoBビジネスをするのに、そんな場当たり的な訪問と商談で決まるわけがない。

そのためやはり、腰を据えての面談が必要であり、そのためにはアポイントをとって、約束をして伺うのだ。

そのアポイントを設定するために、電話をかける必要があり、その電話をかけるためには担当者様の名前を知らなくてはならない。

そのお名前を聞き出すために、門番からの信用を勝ち取らなくてはならないのだ。

その信用は、ただひとえに「情報」の有無が大きい。

そしてそれを大きく補助するのは「第一印象」である。

こうしてアポイントを取れたなら、あとはセオリー通りに営業活動をしていこう。

飛び込み営業は、お客様との接点をどうやっても作れない場合の最終手段として作法を覚えておくと良い。

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