前回の記事で、お客様は「使える営業マン」にしか用がないのだと説明した。
そして「使える営業マン」とは「実務に精通している頼れる営業マン」だと述べた。
さらに「実務」とは「机上の知識ではなく現場で培った戦場の剣」と結論付けた。
本記事では、この「戦場の剣」の身に付け方について説明していく。
必ず積み重ねると決める
まずは精神論がポイントになる。
「必ず積み重ねる」と決意することだ。
この決意がないと、意外に積み重ねることができない。よしんば惰性で身についていくこともあるかもしれないが、決意している人とはそのスピードや量、質、精度が異なってくる。
この決意がない人は、このように語ることが多い。
「俺は営業だから技術については勉強しなくていいんだ」
「俺は文系だから、理系のことは知らなくてもいいんだ」
こういうことを言っている人はいつまでも知識経験が蓄積せず、結果、売れない。
つまり新規開拓ができない。
トークに厚みが出ず、たとえ20年のキャリアがあっても「いまひとつ」な営業マンにしかならない。
なぜ「いまひとつ」なのかといえば、理由や原因をしっかり説明できないからだ。
お客様は、営業マンの振る舞いを見て、直感的に「頼れそう」とか「コイツ大したことないな」ととジャッジする。第一印象にも関わる部分と言える。
とにかく、「積み重ねる」ということに関して放棄をしないということが大切だ。
当たり前だと思うかもしれないが、意外とこれができていない人が僕の周りにたくさんいるから、まず大切な精神論であると説明した。
ケーススタディをちゃんと増やす
僕が言う「積み重ねる」とは、失敗したこと、成功したこと、それらの原因をちゃんと掘り下げておくことを指す。
アリストテレスはこう言った。
「ものごとを理解するとは、その原因を知ることである」と。
「この材料にはXXという物質が含まれていて、これが空気中の水分と反応してしまって失敗した」
「良い仕上がりで施工できた。艶が少ないタイプの塗料を選択したことが内装にマッチした」
など、失敗も成功も原因を突き詰めて理解することが大切だ。
また、メカニズムを多く習得していくと、それらを組み合わせて応用的な思考ができるようにもなる。
同じような案件に当たったときに、失敗を回避したり、またうまくいった方法で成功すれば良い。
このようにケーススタディをしっかり積み重ねていくことで、営業マンはひとつずつ強化されていく。
泥臭いことをケアできる
営業マンという役割をしていると、多くの人はこれらのことに一生懸命になりがちだ。
- 自社製品の素晴らしいところ
- 他社製品との比較
もちろん、これらは大切なことではある。
これらを把握していないと最初の売り込みができないからだ。
しかし、いつまでもこの部分だけに注目してゴリ押ししていてもいけない。なぜならお客様にとっては、その担当者様にとっては、どこの製品・サービスを選んでも大した違いがないことが多いからである。
もちろん例外的に、超斬新的な、業界初の、画期的で安価な製品を営業することもなくはない。
しかしながら大抵は、ドングリの背比べな性能や価格の差で勝負することが多い。
既に使っている他社品があって、それから置き換えてもらう、みたいなパターンが大半だ。
もしくは新規製品への採用のためのコンペティションに参加するような、ほぼ横一線の勝負。
そんなときに差がつくのは「泥臭いことをケアできる」かどうかだ。
泥臭いこととは、商品の特性を説明するときに前面に押し出される、
「スペック」「価格」などのわかりやすい要素以外のことを指す。
例えば
- 在庫が豊富にある(急な発注にも対応可)
- 生産拠点が近い(すぐに届く)
- 商業施設での施工経験が豊富(クレーム起きにくい)
- 必要書類の作成に慣れている
- 軽微なカスタマイズに対応できる
など、商品そのもののスペックではないが、会社の対応としてできることをしっかり伝えることが有効だ。
このようなことは、最初はわからないかと思う。僕もわからなかった。
しかし、僕もケーススタディを積み重ねているうちに気づいたのだ。
お客様はこのような泥臭い部分こそ着目しているのだと。
これらは実務を通じてしか、身につかないことでもある。
お客様は自分をラクさせてくれる営業マンを好む。
自分をトラブルに巻き込まない営業マンを好む。頼りにする。
大抵のトラブルは、製品のスペックそのものではなく、採用時の書類の不備とか、現場のオペレートや運搬の途中、搬入のタイミングで発生する。
そういう危険の芽を未然に除去できる営業マンこそ、お客様は求めている。
そのような一見、泥臭いことを先回りしてケアできる営業マンになってほしい。
そのためにはやはり、ひとつひとつ、実際に事にあたりながらケーススタディを積み重ねていくしかないのだ。
「コイツ…デキる」
このように、ケーススタディを十分に身に付けた営業マンは、お客様から
「こういう場合はどうなるの?大丈夫?」
と聞かれたときに
「それはそのままでは危険です。この部分をこうして対策すれば大丈夫ですよ。以前似たような現場で、そのように対処できました」
と語れるとお客様は
「(コイツ…デキる…!)」と思ってくれる。
これがとても大事だ。「プロ感」を感じさせること。
逆にこれができないと、
「それは危ないかもしれませんね…対策方法は、ちょっと確認してまた連絡します」
というのは、無難な対応ではあるのだが、ちょっと「プロ感」は出ない対応になる。
「即答できる」が結構大事なのだ。そこに経験値が滲み出る。
積み重ね期間:約2年
このように実務経験を通して自身にケーススタディの鎧と剣を纏っていくのであるが、一体どれくらいかかるんだと心配な人も多いかと思う。
僕も建築と化学の分野を、それぞれゼロからスタートした。まさに素人スタートだった。
どちらもやってみた感触としては、1年では半人前まで。
2年で独り立ちして戦えるようになり、そこからさらに半年で一端の戦士になれる。
この2年0ヶ月から2年6ヶ月の6ヶ月間が、特に成長すると自身の体験から思う。
一通りの武装を身に付けた状態での、さらなる強敵との戦いが詰まってきて、そこでさらに鍛えられるからだ。
知識経験も増えてきているから、ケーススタディを有機的に組み合わせることができて、応用的な解決方法や、提案ができるようになるのもこの6ヶ月間だと思う。
そのことについてはまた別記事で詳細に述べる。
続き:技術マンから学ぶ
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