エピソード2 飢えた猟犬

自分語り

僕の名前はヤコバシ。成果を出したが故にブラックを憎む男。

前回の記事では僕がなぜ大手企業を選ばなかったのか、どういう軸で就職活動をしたかを説明した。要約すると、

  • 規模ではなく、儲かっている会社
  • 自分に営業力をつければどこでも通用する

この2軸を追い求め、それに合致するであろう会社を見つけ出して内定を得た。その内定者期間中にインターンという、ただのアルバイトをしていよいよ大学を卒業、入社したのだった。

このサイトでは、僕の体験から導き出された一つの答えをお話しする。

その答えとは「儲かっている化学メーカーで営業職をやれ」だ。

新人営業マン 〜猟犬は野に放たれる〜

4月に入社して1週間、先輩営業マンに同行した。今思うとこの同行の意味は薄かった。なぜなら先輩方は既存顧客を中心に回るルート営業と化していて、これから僕らに課される新規開拓はほとんど行っていなかったからだ。

そして同行が終わったらパンフレットを使ったロールプレイングを先輩社員と行うという研修。あとはマナー講師を招いての電話対応とか1日やって、その研修期間(1週間)が終わったら「ハイ営業スタートね」と言われた。リストを渡され、一人で野に放たれるのであった。

この会社は、建築業の下請けをやっているような会社で、ゼネコンという大手建設業者から仕事を依頼されて、それを職人に外注し、仕上げて、お金をもらうという仕事だった。

営業マン(僕)はゼネコンさんに行って、「こういう工事ができます、いくらでできます、だからお仕事振ってください」とお願いして回る仕事(営業)だった。そして、僕らの会社は大きなビルを相手にした方が規模も金額も大きく効率的だという知見があった。そこで、まだ開拓できていない大型ビルの仕事が取るべく新規営業してこい!というのが新人営業マンたちのミッションであった。

今思えば、こんな新規開拓など、工事のことを大して知らない新人がやるべきことではない。そもそも、「工事」というのはゼネコンさんにとっては大切な商品であり、彼らも大手の看板を背負っている以上、テキトーな担当者・会社に発注できるはずがない。失敗したら大問題だからだ。

ちなみにだが、この会社は就職活動中には明確に「営業」と呼ばないで「プランナー」です、と言っていた。本当に、物は言いようである。プランナーとか、アドバイザーとか、コーディネーターとか横文字で名刺を作るけれど…結局は「営業マン」である。このようにして学生の目をくらましてくる会社もいるから注意して欲しい。

執拗に嗅ぎ回る猟犬

大型ビルというのは基本的には建てた建設会社が面倒を見るのが通例で、このビルを建てた会社を探さなくてはならない。仮にXX建設だとわかっても、営業すべき工事担当者は本社にはいない。聞いても教えてくれるわけがない。ゼネコンさんには「作業所」という単位で小さな事務所がいろんなところに点在しており、そこに営業対象となる担当者さんはいる。

  • 雑居ビルの一室
  • マンションの一室
  • 大型ビル地下駐車場の隅のプレハブ小屋

これは当然だがネットには載っていない。担当者がどこにいるか、誰に売り込めばいいのか、全くわかっていない状況でスタートした。僕は探偵のごとく居場所を突き止めて営業しなくてはならないのだ。最初の難関であった。この時点でかなり頭おかしいスタイルだが、僕は洗脳されていたので諦めなかった。

今はもはや通用しない方法かと思うが、当時は守衛所や防災センターのオッチャン達に秘密保持の意識が薄かったので、このオッチャンたちから大体の情報は聞き出せた。将を射るならまず馬を射よである。

この時、スーツを着ていてはダメだ。怪しい。作業着を着てヘルメットを持って守衛所に行き「あの〜XX建設さんの事務所ってどこでしたっけ?」と、しらばっくれて聞くのである。実は「XX建設」すらカマかけである。オッチャンは「え?XX建設じゃなくてYY建設だろ?それなら地下一階のトイレの横に作業所あるよ」とか普通に教えてくれるのであった。

今これを書いていて、とんでもないことをやっていたなと思う。ちょっとデキる守衛の人なら即通報されて不審人物として逮捕である。たぶん今はもうできないであろう。

そうして飢えた猟犬のように嗅ぎ回り、居場所を突き止めたなら、足繁く通ってお情けで仕事をもらうというのが基本スタイルだった。一応、各大手ゼネコンには実績が少しはあったから、そこを引き合いに出して「安心ですよ〜ここでもやらせてくださいよ〜」と日々拝み倒すのである。なんという悪質営業。実際、キレられて出入り禁止になったところも多々あるが、数ヶ月してほとぼりが冷めたらしれっと再訪する。とんでもない営業スタイルであった。

僕も上記の営業スタイルをナチュラルにできたサイコパスではなかった。実際、上記スタイルを確立するまで毎日本気で考えて、悩んで、3ヶ月くらいで確立できた。結果、僕は仕事をお情けでもらうことができ、生き延びることができた。これができない同期は全然売れなくて、社長や上司から鬼詰めされて辞めた。

上記の僕の仕事はまず、大型ビルを攻略するにあたって、キーマンを探す事だった。キーマンを見つけられないと仕事は進展しない。ゆえに、まずはキーマンをどれだけ見つけられたかが新人の最初の仕事であった。僕は先述のようにコスチュームを工夫したり、怪しまれないトーク術、会話スクリプトを考案したため、この工作員みたいな活動をクリアできたのだった。

獲物を得はじめる猟犬

僕は競争力があると思って入った会社ではあったのだが、実情は競争力はぶっちゃけなく、お客さんが自社に切り替える理由はほとんどなかった。高かったし。

それでも僕を哀れに、もしくはめんどくさく思ってくれたのだろう、少しずつお仕事を振ってもらえるようになった。気付けば、額や規模は小さいながらも、新規開拓の件数という切り口では成果が出せていた。

それを上司は評価し、褒めてくれた。僕はこれだけの苦労をしていたから、うれしくて涙が出た。ちなみに毎朝7時に出社、夜は21〜22時まで残業し自作の自己紹介や営業サポートの資料を紙で作っていた。現場に入って写真を集めたり、休日もコッソリ営業したりしていた。手前味噌だがとんでもない努力をした。実家暮らしで生活のほぼ全ての面倒を見てもらっていたからできたことだった。

それでも野に放たれた猟犬(僕)は満足しない。なぜならどれも小規模の仕事ばかりで営業成績(金額)はノルマ達成できていなかったからだ。そんな中、最初の大きな幸運が訪れた。

新人では規格外の大きさの大規模受注である。この一件を境に僕は天国と地獄を味わう。

長くなってしまったので一旦切る。

続き:EP3 片道切符

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