第一印象を強化編するにあたっては、お客様の警戒を解く必要がある。
初対面の営業マンは、怪しい。
相手が営業マンだとわかっているから「うまく言いくるめられないようにしなくては」とお客様は身構える。それは当然のことだ。
そのようなお客様の警戒心を緩めるには、良い雑談をすることが有効だ。
「雑談」というとフワっとしていてわかりにくいし、「雑談」は苦手だと思う人もいるかと思う。
僕も駆け出しの頃は、仕事に関係ない雑談ができなかった。
しかし、お客様の心のセキュリティを解除していくために、雑談は必要なのだと気がついた。
雑談の目的とは、要するにお客様の心のセキュリティを外しながら、機密情報を聞き出したり、こちらの味方にすることだ。
本記事では、そのセキュリティの解除の概念と、適切な解除方法について説明していく。
視覚をクリアして、その次。
「初めまして」と、初回の面会をしたとき、これまで述べてきたように、まずは視覚が相手に印象を与える。
そして次には会話が始まり、第一印象が決定されていく。
このとき、お客様は緊張と警戒をしている。
しかしここまでで、足切りされない服装をして、良い笑顔ができているならば大丈夫だ。
お客様は「なんだか、この営業マン、見た目からは大丈夫そうだな…?」
という段階まで達している。
ここまでで、視覚の役割は完了だ。警戒を解除しかけている。
次にアイスブレイクを行う。
いわゆる雑談をして、相手に緊張を解いてもらい、残っている警戒の大部分を取り除くことが目的となる。
そのためには「観察力」があるとよい。
観察力については後半で説明していく。
心のセキュリティレベル
僕の経験から考察すると、人の心にはセキュリティレベルがあるようだ。
レベルは1から6までがあり、最初はレベル1の話題しかできない。
- レベル1:アイスブレイク
- レベル2:社会情勢と所属業界
- レベル3:会社・部署について
- レベル4:属人仕事の表層(担当・分野・得意)
- レベル5:属人仕事の深層(決裁権)
- レベル6:プライベートの話題
レベル1の段階にいるのに、成果を焦って一気にレベル5の話題を振ると、警戒されてしまう。
「コイツはいきなり踏み込んできて、信用できないヤツだ」となってしまう。
そのため、最初は効率を求めすぎずに、順番にセキュリティを解除して進んでいく。
急がば回れの精神でいこう。失った信用は取り戻せないからだ。
初回アポではセキュリティレベル1〜3まで解除しておきたい。
- レベル1:アイスブレイク
- レベル2:社会情勢と所属業界
- レベル3:会社・部署について
このレベル1〜3を話題にして、情報を聞き出せたら、初回アポは十分な成果だ。
もちろんレベル4~6まで初回で食い込むことも狙えるなら狙っていく。
しかし、焦らないこと。お客様との会話の呼吸を見逃さずに判断しよう(難しいが熟練するとできるようになる)。
セキュリティレベル1
最初の最初、雑談のスタート(アイスブレイク)はセキュリティレベル1だ。
このレベル1においては、天気の話題が好ましい。
オイオイそんな古典的なことで大丈夫か?と思われるかもしれないが、相手も気負わずに対応できるのが、この天気・気候の話題となる。
「急に暑くなってきちゃって、駅から歩いたら汗かいちゃいました」
「昨夜は急に冷え込んで、自転車が寒かったです」
と自分の話をしてから
「この辺も同じ感じですか?」
とお客様に聞き、話させる。
するとお客様も
「そうそう昨日は暑かったよね」
「今朝は霜が下りててフロントガラス凍ってたよ」
このような当たり障りのない雑談ができる。
続いて「土地トーク」につなげる。
気候→土地の雑談コンボは安心安全のレベル1トークだ。
話題の原料を仕込むと雑談できる
土地トークをするためには実地で材料を集めると自然にトークが展開できる。
そのためには、お客様のオフィスや工場へ行く途中の道をよく観察してみよう。
このように事前に準備することで、雑談ができる。
逆にいえば、準備なしでは雑談はできないのだ。
こういう観察の動きが無意識にできている人は雑談名人で、彼にとっては造作もないことだ。
そういう人は特別に才能がある人だと思って良い。
誰に教わるでもなく、そのように雑談の糸口を見つけて確保できるというのは、才能だと思う。
そうでない人は(僕もそうだった)、本記事で紹介するやり方(観察・準備)で雑談のタネを作ろう。
観察ポイント
まずは、先述のように訪問の道中で話題になりそうなものを観察する。
- 駅舎が立派
- 駅前に行列のできるラーメン屋
- 大きなショッピングモール等
また、それらが無い田舎にお客様の事業所があるなら、
- 特産品(農作物など)
- 米や水(日本酒)
- 遺跡、史跡、寺社(観光名所)
このあたりが土地トークのきっかけになる。
人は自分が関わっている土地に少なからず愛着を持っている。
口ではどんなに「何もない田舎だよ〜」と言っていても、自分の故郷や現在の住まいや職場のある土地には愛着がある。
まずはそこを狙っていく。
この土地トークはアイスブレイクとして汎用性が高く、かつ話題の深度としても浅いので警戒されない。
セキュリティレベル1の話題として最適だ。
またこの土地トークから、工場の歴史や地場産業との関わり(レベル2)などへも展開がしやすいため、初回アポには非常に有効だ。
そしてお客様のオフィスや工場も観察する。
- 入り口に変わった置き物がある
- 門構えが新しくなっている
- 看板が新しい
- 外壁を塗り直している
- 駐車場が舗装され直してある
これらの人工的なものの他にも
- 立派な桜の木がある
- イチョウ並木がある
- 鉢植えの花が手入れされている
- 目の前に畑がある
などの自然・植物系も観察対象になる。
これらの観察によって作られた話題というのは不自然さがない。
そのような話題を提供して、水を向ける。
そしてお客様に話させる。
この話させるというプロセスが警戒を解いていく。
続いてセキュリティレベル2から3の解除方法を説明していく
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