前回までで、善き友になるための考え方について解説してきた。
本記事では、それを実行していくための手法を紹介していく。
「接触回数を増やす」は条件がある
よく、人と親しくなるには「接触回数を増やしましょう」と言われる。
それこそ世の中に出回っている営業テクニック本には、この概念が登場し、
- こまめに顔を出しましょう
- こまめに電話しましょう
- 定期的にメールしましょう
など、接触回数を増やすことを推奨してくる。
これは、その通りでもあるのだが、実践した僕の感想では「合っているが、条件あり」である。
結論から言うと「仲良くないor用事がない相手に何度も接触されてもウザいだけ」ということだ。
このことは、自分が買う側の立場になってみたら、すぐにわかる。
用もないのに何度もやってくる、対して親しくない者は不気味だし、何かよからぬことを企んでいるのではないか?と怪しむ。不審に思う。
ただし営業マンの場合には「あぁ、こいつは何とかして自分に売りたいんだな、契約が欲しくて足繁く通っているんだな」と魂胆が簡単に見抜ける。
最初のうちは微笑ましいが、しつこくなるといい加減ウザくなってくる。
こうなってしまっては、こまめな接触はかえって逆効果。嫌われてしまって、本来なら掴めるはずだった案件も取り逃すことになる。
そのため、物理的に訪問したり面会するのは、用事がある時だけにしておこう。
もちろん、既に取引があり、人間関係ができてくれば訪問や面談は加速度的に人間関係を強化してくれる。
本記事では、そこに至る前の段階においての、接触方法について説明していく。
電話:意外と高コストを強いる
まずは電話のお作法から。
電話には下記のメリットがある。
- 情報伝達量が多く、速い
- 感情・ニュアンスがまぁまぁ伝わる
- タイムリーな情報交換が可能
- 証拠が残りにくい
もちろんデメリットもある。
- 相手の時間を奪う
- 証拠に残りにくい
- 塾考しにくい
これらをふまえると、電話というのは
- 急いでいるとき
- 情報量が多すぎてメールより速いとき
- 謝罪・お願いごとなど感情が伴うとき
- 証拠を残したくないとき
このような条件下で有効な手段であると言えて、こういう時の電話は、お客様もウザく思うことは少ない。
妥当な電話であると受け取られる。
そのため無意識のうちに、プラス方向の効果で接触回数を増やすことができる。
しかし、この妥当な電話ではないタイミングや内容で電話してしまうと、単純にお客様の時間を奪ってしまう。
特に役職があり忙しいお客様はガチで忙しいので、無駄な電話をすごく嫌う。
電話は、少なくとも10分程度を使うし、場合によっては20〜30分に及ぶこともある。
その間、お客様の仕事は中断されてしまうし、その電話の分が、お客様の残業になってしまうのだ。
そうなってしまっては「アイツのせいで仕事が長引いた」とか、「たいした用事でもないのに電話してきてウザい奴だな」という印象を持たれてしまう。
これは非常にまずい。
そのため、電話はうまく使えばプラスの効果が得られるが、よく見極めて使わないと逆に危ないということを憶えておこう。
メール:メイン通信手段
次に現代の必須ツールとなったメールだが、やはり便利な点もあれば注意点もある。
まず、メールの利点はこれらがある。
- 相手の都合で読んでもらえる
- 数字などのデータが比べやすい(塾考できる)
- 記録が残せる(後から確認できる)
- データ添付ができる
- 複数の相手に一斉送信できる(宛先CCなど)
次に、注意点は下記のようなものがある。
- 緊急時には向かない(電話が適す)
- 感情を込めにくい
- 記録が残る(残したくない情報の場合)
とはいえ、これらを差し引きして考えると、
- 緊急時
- 感情を込めなくてはならない時
- 記録を残したくない時
これら以外の時は、大抵はメールの方が好ましい場合が多い。
そのため、日常の業務においてはメールを主体として良いだろう。
電話と違って最大のポイントは「相手の時間を強制的に奪うことがない」という点だ。
特に急ぎの用事でない場合、「それメールで良くない?」と思うことがあなたもあるかと思う。つまりお客様に「それメールで良くない?」と思わせないように気を配れば、大体は大丈夫である。
そんな中で、メールの唯一の弱点と言えるのが、「感情が伝わりにくい」という点だ。文章の字面だけでは、「無機質だ」とよく言われる。
ただこれは、工夫次第で緩和できる。
具体的には、相手を気遣うフレーズを入れると良い。
お客様に対しては、
「ご不明点などございましたら、お気軽にご連絡ください」
という文言を入れる。特に「お気軽に」の部分に「親愛」の感情が滲んでいる。
また、社内のメールに関しては
「後ほどご相談させていただきたく、よろしくお願い致します」
の一文を添える。
実はこの「ご相談」はぶっちゃけ飾りであり、相談する気などない(することもあるが)。
ただこの「相談させて」という単語には「信頼」「忠誠」の感情が隠れていて、ニュアンスを感じさせてくれる。
これらのフレーズを使用することによって、メールをただの無機質な文章にするのではなく、人間性を感じさせることができるのだ。
あとは、とにかく「ありがとうございます」を文頭につけるのも有効だ。
お客様に対しては
「お問い合わせを頂き、誠にありがとうございます」
や、
「早速のご返信真にありがとうございます」
など、どんな些細なことにも感謝の文面を入れると、そこに感情が宿る。
社内に対しても、
「いつもご協力いただきありがとうございます」
「迅速なご対応、誠にありがとうございます」
など、お礼の文言を挟んでいけば良い。
この時、注意なのが「感謝申し上げます」「御礼申し上げます」は若干、無機質なニュアンスを持つところだ。
このような、いわゆる「書き言葉」「文語体」が無機質さの正体でもある。
だから、あえて「ありがとうございます」が良いと個人的にだが、感じている。
ちなみに「誠に」は枕詞でもあるので、感謝する内容によっては省いてもいい。
「誠に」は内容によっては違和感があるときもある(お客様には、積極的に付けても良い。お客様だから)。
年賀状:あえての直筆添え
最後に、年賀状だ。
これまで、電話とメールについて解説してきたが、実はこれらの手段は明確に用事があるときに使うツールでもある。
用事がないのに電話はウザがられるし、メールも「で?」とスルーされる。
しかし、特に新規の営業先などは、そうなってしまうと手詰まりになってしまうと思うかもしれない。
そういう時には年賀状が有効だ。この令和の世に、あえて紙媒体を活用する。
年賀状は、たとえ新規営業先であっても不自然ではない。
もちろん、既存顧客ならば尚更、不自然ではない。日頃お世話になっている人はもちろん、普段はなかなか会わない・会えない人にも送っておくと良い。
そこで一点だけ頑張ってほしいのが直筆で一言書くことである。
よく、会社支給のオフィシャル年賀状をそのまま送るだけ、という営業マンがいる。これは全く意味がない。
「名前だけ」直筆する人もいるが、やはり意味がない。
そこに「今年もよろしくお願い致します」や「もし新たな案件があればお声掛けください!」などと書いておけば、お客様の印象に確実に残る。
多少、お客様の情報を知っているなら「マラソンの調子はいかがですか」「ゴルフまたご一緒しましょう」などを書けば、なおよい。
少なくとも、僕はそういうことを書いてくる取引先は大切に思ってしまう。それは人情だし、もちろん熱意を感じる。
このような年賀状をきっかけに、電話をくれたお客様もいた。
「年賀状ありがとね。新しい案件なんだけど…」というケースもあった。
もちろん、出して初年ですぐ効果が出ることは難しい。
これを数年にわたって継続することで、ボディブローのように効いていくし、そういう下積みがあれば大した用事がなくてもアポイントを取らせてくれる場合もある。
年賀状は、初手が一方通行のコミュニケーション手段である点も、実は良い点だ。相手の時間を奪いにくいし、年始の暇な時であれば、見てらえる可能性も高い。近年では年賀状自体を書く人も減っているので、それだけで差別化になる。
また、古風だが「暑中見舞い」を送る手もある。現代では完全に衰退した風習であるが、お客様が年配の場合、暑中見舞いも有効だ。
その際には、やはり手書きで一筆添えておこう。
年賀状と暑中見舞いで好感度の下地を作っておくと、お客様もあなたに良い感情を抱いてくれて、アポイントの時間を割いてくれることもある。
なおこれらは自腹になる場合もある(年賀状は支給されるかもしれないが)。しかしながら、1枚50円と一筆書くだけでこれだけの効果が得られるとなれば、やらない手はない。
大半の営業マンがやらない技なので、かなりの差別化になる。
接触回数を増やし、お友達へ
まとめると、電話・メール・年賀状といったツールを駆使しながら、お客様との関係性を前進させていく。
その中でなんとかアポイントを取り、相手の情報を聞き出してストックする。
そのうちに小さな仕事を振られるようになり、そこでまた共同作業をしつつ連絡を取り合い、単純接触回数が増えて、絆が深まる。
そうしてトラブルや楽しいことも共有しながら、お客様と信頼関係を築き、友達になっていくのだ。
いよいよここまでで「被購買力の基礎編」の解説が完了した。
- 第一印象
- 実用性
- 善き友であること
次回の記事では総括編として、これらを有機的に結びつけた上で「基礎力」の完成としたい。
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