対等であるという考え方

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知識習得

僕が推奨している化学メーカーの営業職に限らず、メーカー系の営業職をしていくにあたってはお客様と対等であるという意識があると良い。

お客様に必要以上に媚びてしまうと、あなたと、あなたの所属先(会社)の価値が下がってしまう。

その「見せ方」によって、新規案件が来たり来なかったりするし、価格の決定にも影響するので意外と侮れない。

具体的にはどう考えていくと良いか説明していく。

「買ってもらっている」けれど

まず「お客様」と呼ぶからには、自社から製品やサービスにお金を払って購買していただいている「顧客」、もしくは購買してもらえる可能性のある「見込み客」である。

本項では総称し「お客様」と呼ぶ。

自社の製品やサービスに興味がなかったり、必要性を感じていない人、もしくは感じる可能性が低い相手はお客様にはなり得ない。

つまりお客様になっている時点で「売ってほしい」と思うであろう、という下地があるのだ。

もちろん現状で使用している製品やサービスもあるだろう。

しかし万が一、その供給先が製造終了したり、事業から撤退したり、最悪は倒産してしまう可能性もゼロではない。

そのためお客様というのはリスク回避のため常に分散して購入を検討するし、特定の1社に依存するような状況は避けたいと考えている。

4M変更による強固な関係

特に化学品や、それに類する商材はひとたび仕様に組み込まれれば、簡単に切り替えはできないという特性がある。

製造業においては「4M変更」といって、4つのM(マテリアル:材料、マシーン:機械、メソッド:方式、マン:作業員)に変更があったときには不具合や不良品が出やすいために、入念な検証が必要、という鉄則がある。

一定レベルの品質の製品を、安定供給するという信頼関係があってはじめて、モノ作りは成立しているのだ。

そのため化学メーカーと、そのお客様の間にはこの信頼関係がある。

「対等である」という意識

化学メーカーと、そのお客様の間には「買ってもらっている」と「売ってもらっている」という概念がある。

一般消費者と小売店との間のように買い手が強い、いわゆる「買ってやっているんだ」という概念はない。

もちろんお客様には買っていただいている。

しかし一方でお客様からしても「売っていただいている」もしくは「作っていただいている」という意識がある。

そのためこの点において、お客様に対して過度にへりくだる必要はない。

とはいえ化学メーカー側が「作ってやっているんだ」という態度ではまた、健全ではないので(少量品などはこうなってしまうこともあるが)、あくまでもお客様とは対等なビジネスパートナーであるという意識を持っておこう。

後述するが過度にへりくだらないことにより自社の価値を高く感じさせることができる。これは価格交渉において重要となる。

価格交渉の大切さ

商売をしていくにあたっては、「儲け」を考えなくてはならない。

原材料費の削減や、製造の効率化には限度があるし、もはや現代日本においてそれらのコストカットは、既に十分になされている。

むしろこれからは、これまで異様に安く抑えつけられていた固定費や人件費が底を打って、上昇に転じるわけであるから、原価を下げて利益を確保することは難しい局面に入った。

となれば、利益を確保するには販売額を十分な水準にしなくてはならない。

つまり値上げが必要になる。

この値上げ交渉にあたっては、もちろん多くの要因があるが、しかし突き詰めていくと「会社および営業マンがナメられているかどうか」が非常に重要なファクターとなってくる。

お客様も、少しでも原材料費を安くしたいし、なんとか交渉して安くすれば購買担当の個人成績になる。

このとき、化学メーカー営業側には最後の切り札として

「弊社の要求が通らないなら、もう売れません。供給停止です」

という最強・最悪のカードがある。

これで脅してゴリ押す方法もなくはない。

しかしこれは信頼関係を大きく毀損し、場合によっては本当に商売自体を終わらせて売上ゼロにするメガンテ的なカードでもある。

特に大口顧客には安易にチラつかせるべきカードではない。

チラつかせ過ぎると信頼関係は崩れて、長期的に4M変更を乗り越えてまで切り替えの検討をされてしまうリスクが顔を出し始める。

しかし値上げ交渉を自社に有利な方向に導かなくては、自社の成績と未来に関わってくるし、ひいては自分自身の評価にも影響する。

そこで重要になるのが「対等である」という考え方と、同時に友好的で善き友であるというスタンスである。

「善き友」の上位概念「戦友」

この「対等である」という考え方は、被購買力の3要素のひとつ「善き友である」の上位概念である。

善き友は、対等な関係で互いに助け合う友誼の感情を持つ。

お客様との関係の始まりはもちろん、ビジネスの関係である。

しかしこの関係は、協力してモノを作っていく、そして市場で販売して共に利益を分かち合うという、ひとつのチーム、運命共同体であるという見方もできる。

つまりはチーム単位で、共通の敵(ライバル企業)と戦う、戦友なのである。

この点を鑑みれば「買ってやっている」「売ってやっている」などという上下関係のある価値観が誤っていることがわかってもらえるはずだ。

同じ死線の上で共に戦う戦友は、対等な関係でなければ成り立たない。

一方的な収奪が友情を育まないのは当然のことだ。

この価値観で持って価格交渉に臨めば、自社の利益確保のための値上げがいかに大切であるかをお客様に語る口調にも熱がこもる。

同じ敵に向かって戦う戦友のピンチに、自分だけ逃れようとは何事か、ここは協力して戦おうと、強い気持ちでもって交渉ができる。

この交渉は、先述の最悪カード「ウチは損したくないんでもう売りません」という冷たい態度とは異なり、前向きな意志のある、熱い態度となる。

その熱がお客様のガードを軟化させる。

救うために値上げする

また価格改定を推進することは回り巡って、お客様を助けることにつながる。

お客様が最も困ることは何だろうか。

それは「明日から材料が入らない」である。

先述のように4M変更はすぐにはできないし、現在の材料を使うからこそ達成できる性能、ひいては最終製品がある。

もしくは工程間で使う必要性があるから使っている。

既に色々試したが、結局は現行品でしかうまくいかないから、使っているのだ。

これらの材料の供給がひとつでも止まったら、お客様は大変困ってしまう。

代替品を急いで探して、試験して、問題ないことを確かめて、末端ユーザーでの試験を受けて、各種証明書などの書類を準備して…と半年以上の時間と膨大な手間が必要になってしまう。

その間、操業ストップにもなりかねない。

すると末端ユーザーにも多大なる迷惑をかけてしまい信用も失う。

これを回避できることは、実はとてもありがたいことなのである。

しかしながら、化学メーカーの側も商売であるから、不採算な製品は作り続けていくことはできない。

当然、値上げをして採算是正していかなくてはこちらからお断りをして供給終了となり、そのお客様は路頭に迷うことになる。

もし既に複数社購買をしてリスク分散していたとしても、多くて2、3社である。

その一角がなくなったら、足りない分のカバーを残った1、2社に依頼せねばならず、その増産というのはこれからの資源難の時代には簡単ではないだろう。

とはいえこのように代替が簡単に見つかるなら、まだ良い。

他社に託すという考え方もできる。

「そうですか…残念です。では…」

と手を引くことができるからだ。

反対に、本当に自社製品しか使えず

「供給を打ち切られたらモノが作れなくなって潰れてしまいます」

という状況の場合には、そのお客様を助けるために値上げをする。

「この製品…全然儲かってないな。

今年度いっぱいで廃番させてもらえ」

と、いつ経営陣から言われてもおかしくない、供給停止が危ぶまれる採算ラインがある。

このような危険な状況、いわば「死地」にお客様を置かないということ。

そのための価格改定、採算是正である。

これをお客様にご理解いただけるよう説明することは営業マンとしての職務である。

これは対等な関係であると理解しているからこその振る舞いであり、その態度がより一層お客様の信頼を掴む。

続き:有効な新規の探し方

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