前回に続き、善き友であることの要素について。
今回は「もらう」のではなく「つくる」という概念を説明する。
「もらう」は危険
営業マンの仕事は、注文を取ることである。
それを「売る」と表現することもあれば「受ける」「請ける」という表現をすることもある。
個人客に物やサービスを提供する場合には「売る」という表現がしっくりくるのだが、企業対企業いわゆるBtoBの場合には「売る」というよりも「受注する」という表現が適切だ。
例えばボールペンを2,000本納入するという場合。
「2,000本を売った」というよりも「2,000本の受注をした」という考え方をする。
これは相手のビジネスの材料を提供している、という考え方のためだ。
もちろん、このように物体を介さない、コンサルティングや保険などの「サービス」の方が、より「受注する」という表現がしっくりくるであろう。
もしくは「請け負う」という表現も適切だ。
顧客の企業から依頼されて、作業を「請け負う」。
もしくは約束の期日までに品物を納入すると「請け負う」。
これらの「受注する」「請け負う」という単語は、受け身の単語である。
お客様という主体がいて、そこから「受ける」形になっている。
だから、仕事というのはお客様から「もらう」ものだと捉えやすくなる。
「仕事は、お客様にもらうものだ」
若き日の僕も、そう思うようになっていた。
僕は建築業の下請けの営業マンだったから、文字通り、お客様から仕事を「請け負う」という形だった。
つまり「もらって」くるのが仕事だった。
だからお客様に「仕事くださいよ〜」とお願いに行くスタイルの営業だった。
僕の上司も先輩も、ずっとそうやって、元請けのゼネコンさんから仕事を「もらって」きていた。
このように、仕事を「もらう」気でいるのは、実は危険である。
なぜなら、仕事は「もらう」ものであると思い込んでいると、逆に仕事を「くれない」お客様を恨むようになってしまうからだ。
「こんなにお願いしているのに、なぜお仕事をくれないんだ」と思うようになってしまうのだ。
お客様にも都合がある
しかしお客様にも、都合がある。
お客様だって、他の業者ともある程度仲良くしておかないといけないし、古くから世話になっている業者は大切にしなくてはいけない。
お客様が持っている仕事には限りがあり、それを、業者たちに分配していく、振っていくという立場なのだ。
A現場はBさんに。
C現場はDさんに。
Eさんは…今回は仕事ないや、ゴメンね。次は回すから。
と、これは建築業における発注の仕方であるが、メーカーに対しても同じだ。
近年では、材料を1社に依存すると、その会社が潰れたり工場が火災になったりしたら供給が危なくなるために、複数ルートで購買することが常道となっている。
同じAという原料を、2社3社に分散して購入する。
だから、先ほどの建築現場と同じように、
「今月はA社から50%、B社から30%、C社から20%買うわ」
ということも往々にしてあるのだ。
もちろんこんな風に秩序があればいいのだが、お客様の担当者様もやはり人間。
信頼できる業者、借りがある業者に優先して仕事を流していく。
そのため、信頼と実績がある業者に仕事が集まるのは当然のことだ。
つまり、新規に参入しようとしたり、参入できても新参者では、オイシい案件を割り振られることはないのだ。
これはお客様の立場に立って考えれば当たり前のことだ。
業者がミスったら、任命した自分の責任になるということを考慮すれば、安心と実績のある業者にとりあえず発注するのは当然のことだ。
わざわざ新参者にやらせてリスクを取るメリットは薄い(よほど安いとか、特殊な製品なら別だが)。
仕事を「つくる」
では、そのように既存の業者やメーカーで固められているお客様は難攻不落で手も足も出ないのだろうか。あきらめるしかないのか。
そこで有効な考え方が「仕事をつくる」という考え方だ。
ここまでの内容は、お客様から「仕事をもらう」という切り口であった。
お客様が抱えている案件や、購買の数量を、ライバルたちと奪い合うという形だった。
こうなると、実績や力のある者が有利なので、新参者はいつまでも仕事がもらえない。
そのため、ここは「仕事をつくる」というアプローチをしていくことが有効となる。
「仕事をつくる」とは、お客様の仕事をつくってくることを指す。
つまりあなたがお客様の仕事を取ってきてあげるのだ。
「こんな案件を見つけてきました。一緒にやりませんか」とお客様に仕事を持ち込むのである。
もちろん自社ができることが含まれていることが前提だ。
この場合は、あなたがハズされることはない。
仕事のつくりかた
もちろん、このようにお客様の仕事をつくってくることは簡単なことではない。
仕事をもらうのとは、難しさの種類が異なる。
仕事をつくるコツは、「お客様のお客様の層」への接触である。
例えば、建築関係ならば、自分のお客様がゼネコンさんだとすると、そのゼネコンさんのお客様はビルオーナーなどの「施主」になる。
この「施主」に対して、「こんな特殊工法での工事、いかがですか」と営業し、その仕事をゼネコンさんを紹介して、カタチにする。
※ゼネコンさんの既存顧客でないことを確認すること。それを知っていながら営業するのは「飛び越し」でお客様は怒る。
こうなると、お客様の仕事を、あなたが取ってきた形になる。
他にもメーカー系の場合には、末端製品のメーカーから「こんな部材が欲しい」という情報を仕入れてきて、それを作れそうなお客様に「こういう末端メーカー様がいましたよ。一緒に作りませんか」と提案する。
そうすればあなたの勤務先の製品が組み込まれる可能性は高くなる。あなたが取ってきた案件だから、お客様もまずはあなたの勤務先を第一候補とするはずだ。
この営業活動のポイントは、お客様の力を借りなければできない規模の仕事を見つけてくることである。
自社だけで対応できてしまうような仕事では、お客様にとって意味がない。
粘り強くチャンスを待つ
まとめると、お客様のお客様は誰なのか?を考えて、さらに仕事をつくれないか?と思い活動することだ。
もちろん簡単なことではないが、このように「仕事をつくる」という意識を持って日々活動していると、いつかポロッとそういう機会が転がり込んでくる。
そういうときに、逃さずにお客様に仕事を紹介しよう。
そうすれば、そのつくった仕事であなたがハズされることはないし、その実績によってお客様の中での順位は上がる。
お客様だって、売り上げや受注は欲しい。
代わりに仕事をつくってきてくれる営業マンはありがたいし、頼れる存在であること間違いなしだ。
営業マンは仕事を「もらう」のではなく「つくる」ことによって、お客様の善きビジネスパートナー、つまり友になれるのだ。
続き:電話とメール、年賀状
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