ここまで、スーツから始まってシャツ、革靴、小物と、主に「視覚」による第一印象の向上を解説してきた。
「人は見た目が9割」とは有名なフレーズであり、営業マンにとっても重要なポイントだった。
まさに「はじめまして」と初対面するときに、人は視覚から多くの情報を得て、人物評をする。それが「第一印象」なのであるが、その視覚の次、が聴覚となる。
特に営業マンの場合は、視覚とほぼ同時に第一印象を決定づけるのが「聴覚」である。
「聴覚」という本能
「聴覚」とは、会話の内容などの中身は考えない。
楽器の音や動物の鳴き声のように、人間の本能に直接訴えてくるものだ。
営業マンという切り口で考えたときに、その「聴覚」とは要するに、
「営業マンの話し方に対して不快感を感じるかどうか」である。
お客様が「うまく理由は説明できないが、この営業マンとは会話を続けたくない。会話を切り上げたい」と感じることを、まずは回避しなくてはならない。
このお客様自身もうまく言い表せない不快感は、営業マンの「話し方」に起因する。
この営業マンの話し方、とは話している内容や情報の精度は実は関係がない。
音楽のように「音」として入ってくる部分が不快かどうか。
明らかな「不快」までいかなくても「なんか居心地が悪い」「長くは続けたくない」「早く終わらないかな」と無意識に感じさせてしまうことが、営業マンとしては非常にまずい。
ここまで習得してきた、視覚に対するケアが全て無駄になることもある。
早口・高音
まず「音」そのものについて注意する。
早口になってしまったり、うわずった高い声というのは良くない印象を与えてしまう。
これらはテンパっている人の特徴だからだ。
これらはパニックになっている人の特徴であり、決して、頼れる安心感のある営業マンが出す「音」ではない。
事実、営業マンとして駆け出しの頃はこのようになってしまうこともあるかと思う。
それは仕方のないことだ。これは場数を踏めば「慣れ」によって改善できる。
とはいえ意識していないと改善できない人もいるかと思うので、あえて説明した。
ゆっくりした口調で、余裕を持つ。相手に「間」を与えるように、会話に呼吸を作る。
その会話における呼吸の作り方はまた「強化編」で説明する。
印象にダメージを与える「口癖」
次に「口癖」に気をつけたい。
口癖、とは、意識せずともついつい発してしまう言葉だ。だからこそ口癖という。
例えば、
「いや、僕は〜」
「いや、それはこういうことで〜」
「いや、8時に集合しましょう」
といったように、発言のアタマに「いや」を付けてしまう口癖がある。
同じく、似たように
「逆に」「要は」「まぁ」などを連発してしまう人もいる。
これらが厄介なのは、本当に否定したいと思っていなかったとしても、マイナスの印象を少しずつ、チクチクと相手に蓄積をさせてしまうところにある。
「いや、僕もそう思っていたんですよ」
と、同意の意を示したとしても、聞き手は最初の「いや、」の時点で否定された気分がしてしまい、印象にわずかなダメージが入る。
もちろんその後に「僕もそう思っていたんですよ」と続くので、なんだやっぱり同意か、と印象は戻るのであるが、この一瞬の印象ダウンがよくない。こういう軽微なダメージが、無意識下で浸透していくのが第一印象を結果的に「イマイチ」にしてしまう。
感覚が鋭いお客様の場合は、この口癖に意識がいってしまうこともある。
そのため否定のニュアンスを含む言葉・口癖は避けるようにしよう。
「そう」「そうです」「そして」「それなら」などが使いやすい。
「そう、僕もそう思っていたんですよ」
「それなら、8時に集合しましょう」
などだ。否定系の言葉を選ばないところがポイントだ。
こうして文字で読むと「当たり前じゃん」と思うかもしれないが、意外と自分にも把握していない口癖が隠れていることがある。
(ちなみに僕がこの「いや」を使いまくっちゃうタイプだった。あと「まぁ」もよく発声の最初に付けてしまっていた)
矯正方法
ここまで、「話し方」「口癖」について気を付けるポイントを説明した。
これらは、まだ営業という仕事に慣れていない時の特徴であり、また口癖は長年の習慣で身についているので、なかなか直すのが難しいと感じるかもしれない。
しかし、今日この記事を読んだあなたは、自分の話し方に着目するきっかけを得た。
いきなり明日から、全てが改善されることは難しいかもしれないが、半年〜1年ほどの時間をかければ確実に改善できる。
僕もそうだった。僕も、早口や「いや」という口癖がなかなか直らなくて苦労した。
しかしそれでも意識していると、徐々に修正されていく。そうすると新たな癖をつけることができる。
もちろん、新しい癖とはゆっくり、低音で、否定後の口癖を使わない、という癖である。
このように「心がけ」をして意識し続ければ必ず治るので、継続しよう。
「隙あらば自分語り」に気を付けろ
ここまで「話し方」自体で重要なことを述べてきたが、最後にもうひとつ、大切なことを追記しておく。
それは「隙あらば自分語り」に気をつけるということだ。
人間というものは、どんな人でも自分のことを話したいと、実は願っている。これは動物的な本能であると言える。
もちろん、お客様は自分のことを話したいのだ。
「今、こんなことに困っていてね…」
「先日、こんなことがあったのだが…」
と、語りたいのだ。
そして同時にあなたも、自分のことを語りたくなってくるはずだ。
この本能と、戦わなくてはならない。
相手の話の腰を折らずに、聞きに徹する、というのは意外と難易度が高い。
「聞き上手」と呼ばれている人は、才能もあるが、この人間が持つ本能を深く理解している上級者である。
「隙あらば自分語り」はどんな愚か者にもできることだ。
しかしその衝動に気が付いて、内なる自分を押さえ込み、相手に話させること。これは鍛錬が要る。
僕もかなり意識しているが、たまに忘れてしまって自分語りしてしまってから、気づいて「やってしまった…」と反省することが今だにある。
特にお客様が気分良く話している時に、話の腰を折らないこと。カットインしないこと。
(参考記事:『「隙あらば自分語り」に気をつけよ』※僕のメインブログ記事に飛びます)
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