前回の記事では心のセキュリティレベル1を解除するために、アイスブレイクの方法について説明した。
次にセキュリティレベル2へ進んでいく。
セキュリティレベルは下記の段階で進む。
- レベル1:アイスブレイク
- レベル2:社会情勢と所属業界
- レベル3:会社・部署について
- レベル4:属人仕事の表層(担当・分野・得意)
- レベル5:属人仕事の深層(決裁権)
- レベル6:プライベートの話題
レベル1とは、「動物的本能の警戒」のことであった。
天気や天候の話、土地トーク等の当たり障りのない話をすることによって、こちらに敵意や悪意はなく、友好的な存在であることを表した。
また、相手の話を聞き出すことによって相手に情報開示をさせて、心理的ガードを弱めている。
適宜、こちらの情報開示も織り交ぜていけば、相手もこちらに対する警戒をゆるめて、親しみを感じてくれる。
これを総称してアイスブレイクと呼んだ。
この心のセキュリティレベル1が解除されたら、続いてレベル2の解除に取りかかっていく。
レベル2:社会・業界トーク
レベル2においては社会情勢と、お客様が所属している業界の情勢についてを話題にする。
新聞やテレビ、業界誌やネットニュースなど、公開されているものを話題にする。
これらオープンソースの情報はもちろん秘密情報ではないので、無用な警戒を抱かせない。
いきなり踏み込んだ話をすると、相手も身構えてしまうから、まずはこのようなライトな話題から入っていく。
このレベル2における目標は「業界人であり、シロウトではない」ということをわかってもらうことだ。
社会情勢と、その所属業界におけるトピックを話題にすれば
「あぁ、この人はウチの業界に詳しいんだな。同じ業界人なんだな」
と親近感や連帯感を抱く。
「私はシロウトではなく、業界人ですよ」
これを伝えるために業界人トークを、公開情報を用いて行う。
社会情勢と業界トレンド
会話の切り出し方は、その時々で使い分けて問題ないが、社会情勢から始めるとスムーズに入りやすい。
また社会情勢と業界トークの境目はほとんどないから、ほぼほぼ同じと考えて良いが、表層の話題から入る方が自然な流れとなる。
例えば、環境問題を意識して「脱プラスチック」の動きが始まったことを話題にして
「最近は脱プラが世界中で問題になっていて、それを受けて飲食メーカー各社が取り組みを始めてて、問合せ増えてませんか?私のところにもよく来るのですが…
なかなか、プラスチックに替わる材料って、性能とコストが追いつきませんよね…」
というような感じで、社会情勢と、業界のトレンドのトークをしていく。
やはり時事的でホットな話題が、お客様も話しやすいし、情報を知りたかったりするから話も弾みやすい。
業界トークでよく使えるのは下記のような話題だ。
- 法規制の強化
- 業界での事件(事故・不祥事など)
- 新材料
- 原料の値上がり、調達困難
- イベント系の特需
- 季節要因による出荷増減
これらは一例であり、その時々で業界人が対応に追われているような話題がとっかかりとして使いやすい。
最初は難しいと思われるかもしれないが、これもまとまった時間(2年以上)その業界で仕事をしていれば自然に身に付くトークだから、積み上げていく気持ちで取り組んでいこう。
レベル3:会社・部署について
レベル2まで話ができたら、お客様は営業マンに対して
「この人は業界人で、シロウトではないな」
という印象がついている。
レベル2が業界トークだったので、それに続くレベル3はお客様の所属している会社についてを話題にしていくことは、とても自然だ。
「(レベル2トークの内容を受けて)業界の中で、御社はどんな製品を得意とされているんですか?」
レベル2トークにおいて、業界は今、こういう状況にある、という話をしているので、この質問も警戒されずに入っていける。
むしろレベル2トークの際にお客様の方から
「弊社は業界の中ではこういう分野で実はシェアを取っていまして…」
と話してくれることが多い。
そのようにして、レベル2→3は自然に入れるパターンが多いのだが、やはり大切なのは
レベル2→3という順序で、段階を踏んで進んでいる点だ。
もしレベル1の天気・土地トークの状態から一気にレベル3に跳ぼうとして
「御社は業界でどんなことが得意なんですか?」
と聞いたら話の流れとして不自然だし、なんだコイツいきなり突っ込んだ質問してきおって…油断ならないやつ、と身構えられてしまう。
順番に、段階を踏み、相手に話させながら、自己開示させながら進めていくことが大切だ。
さて、こうして会社トークに入っていくと、自動的に部署トークにも繋がる。
ここで押さえておきたいのは、会社・部署方針である。
そもそもお客様の会社がどういう戦略で仕事をしているのかを把握しなければ、その後の展開が無駄になってしまうこともある。
一例を挙げると、
- 薄利多売 or 高付加価値
- 大量生産 or オーダーメイド
- 親会社あり or 独立系
- 既存製品の改良 or 新製品開発
これらがチェックポイントになる。
そのお客様の会社が薄利多売で、大量生産、既存製品の改良を目指しているのに
「弊社は高品質なオーダーメイドを作れますよ!」と提案しても
「いやそれはウチには合わないね…」でオワリだ。
まずはお客様の会社が業界でどんなポジションなのか、そしてそのお客様がどういう戦略で今後戦っていきたいのか、を聞いておこう。
守秘する姿勢も忘れない
もし仮に、誰もが知らない秘密の情報を知っていたとしても、最初はあえて守秘すること。
全く知らないわけではないが、守るべき情報は守るという姿勢を醸し出そう。
そういう姿勢を、デキるお客様ほど敏感に感じ取る。
なぜならお客様は守秘しなくてはいけない事柄が数多くあり、それをちゃんと理解してくれる営業マンでなければ重要な秘密情報は話せないからだ。口が堅い営業マンは信頼される。
知っていても、最初は控えめにする。
話せそうなタイミングが来て、かつお客様のフトコロに十分入り込めているようであれば
「ここだけの話ですが…」と必要な情報を必要量、放出していくことは効果的だ。
このタイミングを計るのは、件数をこなせば身につく。
お客様との会話の呼吸を理解するのには、2〜3年を要すから、ここは焦らなくてもよい。
以上、心のセキュリティレベル2〜3についての解説だった。
焦らずに外周から順番を守って、話を展開することが大切だ。
お客様というのは、自分で話したことを覚えている。
だから順番を守って、徐々に進んでいくことが必要だ。
とにかく焦らないようにしよう。
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