第一印象の強化編、セキュリティレベル4〜6へ入り込む方法について説明する。
本記事は、第一印象の強化編に並べてしまったが、必ずしも第一印象つまり初回アポイントでなくてもよい。
初回アポイントは前回の記事の通り、まずは公私のうちで「公」の範囲であるセキュリティレベル1からスタートし、レベル3の階層まで辿り着いていれば十分な進行と言える。
そこから第2回、第3回とアポイントを重ねていく中で、セキュリティレベルレベルを順次、解除していく。
「ビジネスの話をしにいくのに、なぜ雑談テクニックが要るのか?」
そう、若き日の僕も思っていた。
しかしながら、雑談をすることによって、お客様と信頼関係ができて、その結果としてビジネスが円滑に進むことに気がついた。
つまり新規開拓がスピードアップし、効率が上がる。
セキュリティレベル4
セキュリティレベル4は公私が混在しているゾーンとなる。
まずは「公」つまりお仕事に関しては、
- その人の担当している領域
- 設計している製品が何か
- どんな分野が得意なのか
というレベルになる。
次に「私」つまり個人情報に関しては、比較的ライトなものがレベル4となる。
- 出身地
- 学歴
- 入社何年目か(経歴)
- 現在の住まい
- 趣味の一部
これらが含まれる。
要するに「知人」であれば話しても良いかな、と多くの人が思うラインの個人情報である。
知り合って間もない人に話すのは、このレベル4までが不審に思われないラインとなるだろう。
そのため、このあたりを無難に聞いていく。
前々回の記事ではセキュリティレベル1にて「気候」→「土地」トークのセットが使いやすいと説明したので活用する。
「今日は車で来たんですが、△△さんも車でご通勤ですか?」
『はい、車で来てます』
「お近くなんですか?」
『えぇ、10分くらいですかね』
「それはうらやましい!今のお住まいは長いんですか?」
『異動してきてからですんで…もう5年になるかな』
「ということは、ご出身はまた遠方なんですか?」
『私は大阪の出身で…』
という感じで雑談していく。
この流れから、
- 家の形態(一戸建て・マンション)→家族構成
- 出身地と出身大学
- その人のキャリア(異動・転職など)
これらの話題に派生させていくことができる。
その中で、自分の情報も織り交ぜて自己開示していく。
- 出身地や母校に共通点
- 実際に旅行で訪問した
- 名物を食べたことがある
- 友人と出身地が同じ
この辺を織り交ぜながら、話題を膨らませていく。
この時、できればそれらの要素を褒めると盛り上がる。
「ご出身は栃木ですか!昨年、那須高原に行きました。良いところですよね」
「新潟は友達の出身地でした。笹団子美味しいですよね」
このような知識でも、郷土を褒められた人は喜ぶ。
もし知らないことがあった場合でも、それを詳しく教えてもらうという形でトークを広げていくことができる。
そのためには基礎知識が必要になるが、これも経験を積めば引き出しが増えてくる。
実際に自分でも旅行してみたり、以前お会いしたお客様から聞いた話ですが〜という形でも、雑談の層を厚くすることができる。
セキュリティレベル6
そして続くレベル5を一旦飛ばして、レベル6を先に説明する。
レベル6は非常にプライベートな情報を指す。
- 家庭のこと
- 自分の目標
- 異性関係
- お金の話
- 病気の話
これらは、多少は関係性ができている人でなければ話したくない話題だ。
このレベル6まで入り込めたらかなり仲が良い状態となる。
先述のレベル4トークから家族の話には入り込みやすい。
家族構成を聞けばそこからまた派生させていくことができる。
(いずれこの部分はフローチャート作る)
ただしこのレベル6の領域は、第一印象だけではなく「善き友であること」の強化編ともリンクしていく内容でもある。
善き友であると感じてもらえなかったら、セキュリティレベル6は開かないからだ。
あなたも警戒している相手や、長く付き合うつもりがない相手に、個人的な話はあまりしたくないはずだ。
セキュリティレベル5
さて一旦飛ばしたレベル5は、レベル6が非常に個人的な事柄であるのに対して「お仕事」の要素が入り込んでくる。
レベル4と違うのは、もう少し秘密にしなくてはならないレベルとなる。
このレベル5が営業マンとして新規開拓するために最も大切な部分となる。
お客様が、自分の持つ裁量権の中で決定しているのがこのレベル5だからだ。
また、その性質から、お仕事の力だけでもレベル5は解除することができる。
これは営業マンの実務の力がとても高く、頼れる専門家であると感じたときに解除される。
レベル6→5のルート
心のセキュリティレベル6とは、先述の通り、かなりプライベートな内容となる。
なかなか、人間関係ができていない人には公開したくないし、自分が気に入らない相手にも教えたくないことだ。
もちろん怪しいやつ、不審なやつには絶対に教えない個人情報でもある。
しかし逆に言えば、信用できる人、付き合っていきたい人、なんとなく好感を持つ人ーーつまり友達として付き合っていきたいと思える人には、このレベル6の情報を開示する。
このとき、レベル5はひとまず関係がなくなる。
「私」の分野の情報はレベル1からレベル4に進み、レベル6へ進める。
レベル6は「お仕事」要素なしでも、実は入ることができる。
そこで重要になるのが被購買力の3要素のひとつ「善き友であること」の要素だ。
ここまでで、基礎編において「善き友であること」の基礎ができている。
これからのパートで解説していく「善き友であること」の強化編を組み合わせれば、レベル1→4→6へ到達できる。
そして本記事で最もお伝えしたいことは、このレベル6を解除すると、お客様はレベル5を解除していると錯覚してしまうことだ。
しかしこれは無理のないことでもある。
セキュリティレベルの最深部、自分のプライベートであるレベル6を解放してしまったら、レベル5の情報を話すことに抵抗感が薄れる。
またレベル6まで話すということは、少なからず好感を抱いているということでもあり、信頼としても問題はないと思われている。
この一種のバグを突くことによって、レベル4→5の厚い壁に正面から挑むことなしに、レベル4→6へ飛び級のように入り込めて、レベル6→5もスムーズに入り込むことができるのだ。
新規開拓の効率アップ
このショートカットルートを活用できる営業マンは、新期開拓のスピードが早いし、そのお客様が見込みがあるのかどうかを早期にジャッジできて、撤退も早くなる。
したがって、多くの案件に当たることができて、結果として新規開拓件数が増えていくのである。
営業マンとしてよろしくないのは、雑談しなかったり、「善き友であること」を重視していないために、このレベル6→5のルートが使えず、いつまでも正攻法の「お仕事」ルートであるレベル4→5の厚い壁に阻まれてずっととどまってしまうことだ。
この状態は、機密情報によるヒントが少ないので進行が遅いばかりか、退くこともできない。
そのためこのお客様候補に割く時間が増えてしまって、結果的に他の候補への展開ができなくなってしまって、結果的に新規開拓件数が減る。
これを避けるために、素早くレベル6を解除して、レベル5の機密情報をもらう。
そして素早くジャッジして、続行なら機密情報を使って素早く対応していくし、ダメそうなら撤退する。
例えば、競合他社が自社と同じようなものを納入しているとして、その商権を奪取しようと企てたとする。
このとき、レベル5情報とは、
- 現行品の単価
- 現行品の不満点
- 現行品で起きたトラブル
などの重要な機密情報となる。
もし単価が非常に安く、自社の利益にならなさそうだと感じたら撤退できるし、不満点を改善できるかどうかがわかれば対処すべきポイントがすぐにわかる。
トラブル情報も、お客様としてはあまり話したくない内容だろう。
もしこのレベル5情報がなければ、ほぼノーヒントの状態で見積書を作って価格を打診することになる。
それで全然勝負にならない値段を提示してしまったらお客様から「コスト合わないので」と打ち切られるし、逆に安すぎる値段を提示したら自社の利益が減ってしまう(もっと取れたかもしれないのに)。
※なお、一度高い見積を出してから、高いと言われたから下げるのは「じゃあ最初の見積もりはなんだったんだよ」と不信感を持たせてしまい逆効果になる。
現行品の不満点が納期対応だとしたら、それに対応できるかを検討しなくてはいけないし、品質保証だったとしたらお客様の要求レベルが高いのかもしれない。
そのあたりの情報がなければ、新規開拓は進まないことをわかってもらえたかと思う。
なのでもし、このレベル5情報がなかったとしたら、レベル4状態にて、見積書を出してジャッジされて、サンプルを何種類も出して検討してもらって性能チェックして(ヒントが少ないため)、それが合格してから運用方法の話になる。
レベル4から5へ正面突破しようとすると、このように長くて、余計な工程が増えてしまう。
長くなってしまったが、レベル1→4→6→5のルートの存在があることを説明した。
公私における私ルートをうまく使ってフトコロに入り込むことでスムーズな新規開拓活動ができる。
結局のところ、良い営業マンはこれができるから新規開拓スピードとトライ件数が増えて、結果的に成績アップするのだ。
注意:正攻法しか通じない人
例外的に、このレベル6→5の戦法が通じない相手(お客様)もいる。
このお客様はこのレベル6→5のルートが存在することを既に知っているタイプなので、このルートを意図的に防いでくる。
役員クラスとか、ベテランの部長とか、そういう猛者に多い特徴だ。
なぜならこの人たちは、自分もこの手法を使ってきたから、その存在を熟知しているのだ。
そのため、自分が懐柔されて秘密をしゃべってしまうことを意図的に防いでくるし、防いでいるのに執拗にこのルートを狙ってくる者を警戒するようになる。
そのため、この手の相手に対しては、正攻法のレベル4→5で頑張るのが逆に効率的だったりする。
なぜならその堅さにより他社営業マンも近づけないからだ。
そこをあえて正攻法で突破していく。
次回から知識経験の強化編へ進んでいく。
続き:営業としての知見の拡充
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