儲かっている化学メーカーに入社できたら、ひとまずはセーフティゾーンに入れる。よほどやらかさなければ定年まで暮らしていけることはほぼ確定だ。
化学メーカーの営業マンとして求められることは、まずしっかりと「店番」をすることである。
儲かっているがゆえに、店番こそが第一に求められる役割だ。そして店番は、勤勉に勤めれば、誰でもできる。
しかしながら、それはあまりにもつまらない働き方だ。
特別に評価されることもない。解雇こそされないが、いずれ歳を取ったときに閑職に追いやられる可能性もある。
ずっと営業の第一線でプレーしつつ、営業職ライフを満喫するためには、営業として社内ポジションを安定させることが必須だ。
そのためには、実績が要る。
単なるサボリーマンでは肩身の狭い思いをする。ビビりながらサボることになる。
そうではなく、仕事もきちんとやって、大きな顔をしてサボっていくことを僕は推奨する。
新市場を切り拓け
前の記事で、新たな市場を切り開いた者には社内ポジションが約束されると述べた。
おさらいすると、知識経験を積み上げた営業マンに新規開拓のスピリットがあれば、新たな市場を開拓することができる、ということだった。
新たな市場とは、”単なる新規開拓”ではない。
単なる新規開拓とは、競合他社からシェアを奪うだとか、今あるお客さんと同じような業態、性質の層を横展開することだ。
そうではなく、今までひとつも事例がなかった客層・業界への新規営業のことを指す。
社内はもとより、競合他社も出入りしていないような客層や業界。
こういうところに新たな常識として自社の商品を売ることが真の新規開拓と言える。
同じ商品でも、これまでとは違う用途を使い方を提案し、初めて売る。それができたら、自社は大きな先行者優位を手に入れ、シェアを拡大できる。
ゆえにあなたは社内で欠かせない存在になれる。
それを複数回繰り返したら、管理職どころか役員も見えてくる。
これができる営業マンは希少だからだ。
しかし世の中を見回すと、大ヒットした商品やサービスは、全く新しいものももちろんあるが、元々は別の用途だったものが他用途に転用された例が多くある。
ケンタッキーもマクドナルドも、ハンバーガーを売るだけではなくレシピを売ってフランチャイズを作ろうと思いたったところが革新的だった。
もともとは捨てていた部分を珍味として売り始めたのがマグロの大トロだ。
そういう商品を発掘できる営業マンはどの会社でも希少だし、その能力はどこでも通用するレベルに至れる。売り子や店番でない、真の営業マンがこれだ。
参考記事:営業タイプ 5分類(僕が書いている雑記ブログへ飛びます)。
アンテナの作動
新市場を切り開くということは、誰にでもできる事ではない。
もちろん、突然降って湧いてくるものでもない。ではどうすれば良いのか?
それは「いつかやってやるぞ」という気持ちがあればよい。
この気持ちだけ心の片隅に持っていれば良い。
この気持ちさえ持っていれば、常に新規へのアンテナが作動している状態になる。
このアンテナが作動していれば「もしかしてこれって…」と連想することができる。僕の経験上、「探そう!」と思って机上で探して見つかるものではない。
観光に行って気がつくものもあるし、友達と飲んでいて話の中から気付くこともある。お客様との雑談の中で点と点が繋がることも多い。テレビからヒントを得ることもあるだろう。
これらはアンテナが作動している起こることだ。アンテナが作動していなければ、当然だが連想は生まれない。
しかし「アンテナ作動するぞ!」と意識しなければ作動しないのでは意味がない。やはり「新しい商売を切り開きたい!」という気持ちが、アンテナを作動させる電源だ。
精神論チックではある。しかしながら、意識の片隅に置く。それだけでいい。
「いつか必ず、新規をやってやるぞ」と思っているだけでいい。
…今、世の中にある、流行っている商品は、必ず、何かから派生したものだ。もともとは他の用途だったものや、すでに存在していたものが見方を変え、パワーアップしたものであふれている。
それを初めてやった人や会社が、大きな先行者利益を得ながら市場を切り開いてきた。
プロダクト・サイクル
後述するが、どんな製品にも寿命がある。
その寿命に長短の違いはあれど、生まれて、成長して最盛期を迎えたら、衰退して最後には死ぬ。
これをプロダクトサイクルと呼ぶが、営業マンは「誕生させる」のが最大の仕事だ。これができた人が出世し、役員になることが多い。
社内政治での出世狙いは、なんだかんだで不安定だ。
派閥のトップが負けたら一気に左遷だし、主流派になっていてもトップが大病を患ったり、亡くなってしまったら終了だ。そうならないためには実力と実績が必要で、それがこの新規市場の開拓なのだ。
幸いにも、化学メーカーにはこのような新市場の開拓がしやすい環境にある。
牛丼屋が新市場を開拓するのは難しいし、家電メーカーも競争が激しい。しかし化学業界は、製品改良の余地もあるし、競争も緩やかだ。また若年層が少ないので社内でのライバルも減る。
この舞台であれば、頑張りが反映されやすいと僕は考えるし、実際にそのような営業活動ができた。
しかも化学業界のプロダクト・ライフは長い部類に入る。数年でトレンドが変わってしまうような性質の製品ではないので腰を据えてじっくりと取り組めるし、それまでの蓄積製品のおかげで安定的に収益も上がる。もちろん微減はするのだが、そのスピードは緩やかだ。
そういうスピードが遅い環境においても、慢心せず次世代の稼ぎ頭を作り出していく、そういう意識があなたに高い視座を与えて、真に価値ある人材になる下地を作る。
これは化学業界だけでなくどんな業界でも共通の視座と言えるだろう。
続き:第2章 第一印象の基礎力
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