まず営業職は、所属する会社や業界により難易度が大きく変わる。
よく、きつい営業を愚痴っている人がいるが、それはキツイ営業を要求される業界と会社を選んでしまっているだけだと自覚してほしい。そこしか入れなかったから、というのはちょっとちがう。
難易度が「ハード」の営業職にいたらハードなのは当たり前。
敵キャラであるお客さんが硬くて、ライバルである競合他社が強いとなれば、これはハードモードだ。
逆に、お客さんが優しくて、ライバルもいない商品だったら、営業がラクなのは容易に想像できるだろう。
つまり、営業職というのはメタ的な視点で難易度を読み取らなくてはならない。
入ってから頑張ろう、というのはキツイのだ。若き頃の僕もそう思っていたから、わかるのだが、営業の難易度は平等ではないのだ。
僕が推奨している、儲かっている化学メーカーで営業マンをやれというのは、比較的難易度が低く、競合も少ないというのが理由だ。
なぜ化学メーカー営業が良いのか、説明していく。
積み上げが効く営業
僕は積み上げが効くタイプの営業職を推す。
積み上げ型とは、高度な専門知識や経験が要求される仕事だ。その業界や商品に知見が深いスペシャリスト性を要求される営業を指す。
その見分け方は、昔からあり、形態が変わっていないものである。
具体的には建築業や鉄鋼、化学などだ。形態が変わっていないというのが最大のポイントだ。形態が変わっていないからこそ、一度身につけた知識や経験が長く活用できる。
僕はかつて建築業関連の営業をしていたのでわかるが、建築業というのは机上でするものではなく現場体験がないと良い仕事はできない。実際にはどういう手順で作業をするのか、材料はどこに貯蔵するのか、近隣への対策は、など考えることが営業にも必要だった。これはやればやるほど積み上がる。
今は化学系の営業をしているが、これも積み上げが必要な仕事だ。化学品の特性、使用時の効果、影響、副作用などはひとつずつ、営業マンの知識経験となる。この知識経験が活用しやすいタイプの営業職を選べば、年を追うごとに業務は楽になる。
知識経験が増えることにより良い営業活動ができて、結果として新規開拓ができるようになる。
積み上げが効かない仕事
一方で積み上げが効かない仕事を考えてみる。積み上げが効く営業は「形態が変わっていない」がポイントであった。つまり、これの逆である、
「形態が早めに変わってしまう」業界は営業が大変になる。
例えば新製品がどんどん生まれては消えていくような製品。これは新たに勉強をしなくてはならない。その負担を、営業マンが負うハメになる。
一昔前は、ガラケーの営業などはこれにあたった。
毎年、新機種が発売され、技術はどんどん進化していく。こういう製品は消費者にとってはもちろんありがたいのだが、売る立場である営業マンにとっては大変だ。蓄積が積み上がらないので、常に勉強し続けなくてはならない。
勉強するのは当たり前なのだが、その勉強が今後何十年も使える知識なのかがポイントだ。
営業基礎力
ここまで読んで、そんなことはないと思った営業マンも多いだろう。
「話し方やビジネスマナー、業界の知識などは積み上がっているじゃないか」と。
しかしこれは、営業職という業種自体に付く基礎スキルであり、営業職をやる上での基礎体力のようなものだ。これはどんな営業職であっても一定のところまではいくし、仮に転職してもこの基礎力があれば営業活動自体はできる。
僕が言っているのは、この土台である営業基礎力という1階部分の上に、専門性という2階部分を立てることが必要だということだ。
繰り返すが、基本的な対人スキルや営業テクニックはどんな営業職でも積み上がる。これは、営業経験ゼロの新卒がまず身につけるべきところだ。名刺の渡し方から始まり、見積りを作ること。売って、代金を回収すること。この辺の基本的な動作はどこでも共通だ。
この基礎力の土台は2~3年で完成するであろう。
その先が大切だ。
その先に、いかに自分の業界や商品の理解を深め、積み上げることができるかどうか。これがポイントだ。
もちろん営業基礎力はどんな営業職でも必要なスキルだ。だがそれだけでは、ラクはできない。
営業マン同士の競争と参入障壁
営業マン同士の競争についても忘れてはならない。
まず社外での競争。ライバル社の営業マンと戦うのは当然である。
しかし、社内の競争にも勝ち抜かなければ、役職も付かず給与も増えない。
新卒で入社したら、自分が一番年下だから成績が悪いのも許される。だが、いつまでもそのままでは後輩が入ってきて、抜かされてしまうこともあるかもれない。
社内での出世レースに勝つにはやはり実績を挙げることが必要だ。
しかし、肉体的・時間的に頑張れば新人であっても成績に直結するタイプの営業では、社内の競争は激しくなる。冷静に考えてみると、新人と同じ土俵で戦うタイプの営業は、歳をとればとるほど、きつくなっていく。要するに一軒でも多く飛び込み営業したら成果が増えるようなタイプの商材だ。
ここで、積み上げが効くタイプの営業であれば知識経験という積み上げがそのまま参入障壁となって、新人には負けない営業になれる。
知識はともかくとして、経験という財産はすぐには積み上がらない。
経験とは、成功した事例やクレームなどのケーススタディのことで、これらを自分が当事者となって体験することでトークに重みが増す。
この重みこそが新人とベテランを分けるものであり、これが有効な業界・商品を売る営業になろうぜ!というのが僕の主張だ。
化学業界の良いところ
上記よりこの2つが、コスパよく働くために必要な条件だ。
- 知識経験の蓄積が活かせる
- 社内ライバルが少ない
知識経験の積み重ねにより、徐々に労力は減る。知識経験が自分を助けてくれる種類の営業職や商品が好ましい。
そして社内ライバルの少なさも重要だ。知識経験の積み重ねでも十分差別化ができるのだが、人一倍急いでいるのなら新規開拓を行おう。それも、既存商品や既存の業界向けを伸ばすのではなく、自社も他社もやってないブルーオシャンに打って出るタイプの新規営業だ。
これができたら、社内でのあなたの立場は約束されるだろう。これができる人は少ないからだ。この手法で役員を目指していくのが儲かっている化学メーカーでの勝ち筋だと僕は考えている。
もちろん、そんなオイシイものは簡単には見つからないし、モノが製造できるのか、採算は取れるのかという問題もある。
しかし、そういう問題があるからこそブルーオーシャンなのだ。
こういう市場を切り開けたら、あなたの社内での将来は約束されるし、仮に転職する時にもこの経験は何物にも代え難い。僕はこれを宣教師型の営業マンと呼ぶ。
化学メーカーで宣教師型営業ができる人は少ない。少ないので、すぐに目立つことができる。
(2020.7.5追記)
このことについて電子書籍を書いた。なぜ化学業界を推すのか?についてデータを用いて説明した。参考にしていただけたら幸いだ。
内容についての紹介も、このブログ記事で行ったので、購入前に一読してもらえたらと思う。
続き:真に価値ある人材になる
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