本記事からは被購買力の3要素の最後「善き友」の強化編を説明していく。
「善き友」基礎編の復習
なお基礎編は下記3項目だった。
これらの基礎編は、まずは警戒しているお客様に対して、これらのメッセージを伝える。
- 私はあなたを騙そうとはしていません。
- 我田引水の、悪質な営業マンではありません。
- あなたの時間を無駄に奪いません。
つまり、「怪しくない」「ウザくない」ということを示して、お客様に警戒のバリアを解いてもらうことが最優先事項であった。
最初の最初で警戒バリアや、そのさらに強化版である拒絶バリアを展開されてしまうと、それを解除するのにかなりの時間を要してしまうし、そもそも解除不能な場合も多い。
「この営業マン、悪いやつじゃなさそうだな」
と思ってもらうことがまず第一なのだ。
そういう意味で、この3記事を基礎編とした。
それらができているという前提のもと、強化編へ進んでいく。
「一線」を引かない
営業マンという立場になると、お客様がすごく高位な存在に思えてくる。
確かに、自分(営業マン)からモノやサービスを買ってくれるのはお客様だから、その契約行為が「恩恵」に見えるかもしれない。
「お客様は神様です」
というフレーズも、深層心理で営業マンの心理にお客様>営業マンの意識を植え付けている一因だろう。
また特に、お客様が部長とか取締役とか、それこそ社長などの肩書を持っていたとき。
もしくは自分の親のような年齢だったとき、ますますお客様のことを高い存在に感じてしまう。
そのため、必要以上に低姿勢になってしまったり、なんでも言うことを聞きたくなってしまう。
お客様が、特別な人間だと感じてしまうのは、そのような背景があるから仕方ないことなのかもしれない。
そうなると、営業マンである自分は、そんなお客様に仕える家臣とか、配下であるかのような気分になってくる。
主従の関係の錯覚である。
この錯覚に陥ると、ただただ言うことを聞くだけの存在になってしまう。
言いたいことも言えないし、遠慮するようになる。
お客様との間に「一線」を引いてしまう。
この「一線」を引いている営業マンは、お客様の心のセキュリティを解除するのに時間がかかってしまう。
どこか他人行儀というか、ビジネスだけの関係というか、お仕事で会社を代表して会っている、というような雰囲気になる。
もちろん、それが事実ではある。
こちらも、仕事だから会っているのだ。それは当たり前だ。
しかし、この感じを出さない方が、結果的にスピーディに案件が進む。
「ざっくばらん」がみんな好き
先述のような、「一線を引いちゃう営業マン」が多いので、お客様は実はやきもきしている。
「みんな、俺が聞くと萎縮しちゃって本当のことを言ってくれないんだよな」
「ぶっちゃけたリアルな情報が知りたいのに、オフィシャル情報で逃げちゃうんだよな」
そんな風に思っている。
例えば、購買部長からこのような質問が来る。
「これから原油あがりそうだけど、値上げの兆候ある?」
購買部長は、事前に自社内に対して値上げのアナウンスをするために、メーカー内部の情報が知りたいのだ。
それは彼の職務上、必要な動きであり、突如として値上げをされたときに「初耳でした」では彼のメンツがなくなる。
「事前に告知しておいたじゃん」というエクスキューズを、彼(購買部長)はその職務上、作っておきたいのだ。
これに対し、一線を引いている営業マンが応対した場合は、こうなる。
「そのリスクはありますが…ちょっと今、社内で検討中でして。
また確定したらご連絡します」
という感じで、当たり障りのない回答をすることが多い。
もちろん、これは適切な対応と言える。
通常、このような情報は会社方針が決まってから案内状を作成して一斉告知、というのがスジである。
しかし、そんなことはお客様(購買部長)もわかっている。
わかった上で
「実際、ぶっちゃけ、どうなのよ?
コッソリ教えてくれない?」
とお願いしてきているのである。
これに対して
「会社方針なんで、言えません」
と一線を引いちゃうのが並の営業マンである。
そこで
「コレここだけの秘密ですよ?
実はとある材料が既に高騰を始めていまして…
ウチも今、値上げ額の交渉中なんですが、値上げゼロは難しそうです。
その分、5%くらいコスト上がっちゃうと思います。
その実行は、おそらく半年後くらい…まだ確定ではないんですが…」
と、このようにヒミツの内部情報を教えてくれる営業マンが、お客様としてはありがたいのだ。
これはよく「ざっくばらん」と呼ばれるもので、マジメな新人営業マンはなかなかできないトークとなる。
事実、新人のうちは、秘密をどこまで話して良いのかわからないと思う。
本当に話しちゃダメな社内の機密情報を出してしまっては、それはそれでマズイ。
だが話しても良いラインと、ダメなラインを見極めた上で、お客様が欲している情報を回答していく。
それが「ざっくばらん」の正体である。
「ぶっちゃけ」も同じ意味であり、結局のところ、お客様もそういう情報が知りたいのだ。
「ぶっちゃけ、XX社(競合)の製品って、どう思う?」
「実際さ、御社ってどれくらいがギリギリの単価なの?」
そんなような質問に対して、「タテマエ」で回答すると、お客様はガッカリする。
ある程度の「ホンネ」を出していくことがお客様の信頼獲得につながる。
肩肘を張らないお茶目さ
ここまで、ぶっちゃけトークの大切さと、お客様のホンネについて説明してきた。
しかしながら、その期待に副えないときももちろんあるし、経験が浅いうちはどこまでが話して良いラインなのか、正確にジャッジできないこともあるだろう。
そんなときは、そのことを「ぶっちゃけ正直に」言ってしまうのも良い。
「いや〜その情報、お話ししたいんですが、ちょっと話していいかわからないんで…
最悪、ぼくクビになっちゃうかもしれないんで…ごめんなさい!!」
と正直に打ち明けて謝るのである。
他にも、
「それについては…すみません!わからないです!
勉強不足で申し訳ないのですが、すぐに社内で確認します」
と人間ぽさを前面に出して正直に言う。
これらの対応方法は、ちょっと「プロ感」とは言えない。
しかし誠実で、正直である。
このような対応をみてお客様は
「コイツは嘘をついていないな。
わからないことはわからないと言うし、すぐに調べようとする気もある」
と感じてくれる。
※もちろん、ちゃんと調べてすぐに回答しよう。
この「肩肘を張らない」感じと、そこに漂う「お茶目さ」は営業マンとして有効な武器になる。
全てが完璧な営業マンなど存在しないし、知らないこともたくさんある。
それに対して、
「ゴメンちょっと知らないや!すぐ調べるね!てへぺろ」
ができる営業マンはお客様から信頼される。
とにかく正直だからだ。
そして「てへぺろ」のお茶目さ。
ここもお客様に親しみを抱いてもらえるポイントだ。
コミュニケーション・コスト
コミュニケーション・コストという単語がある。
これは「話しかけやすい人」は心理的コストが低く、
「話しかけにくい人」は心理的コストが高いということだ。
そこにきて、先述の「ぶっちゃけトークができる営業マン」は、このコミュニケーションコストがとても低い。
お客様も、結局は一般人である。
勤務先や、役職を取り去ってしまったら、ご近所のオジサンと何も変わらないのだ。
あなたのお父さん、お母さんと、大して変わらない。
知っていることは知っているが、知らないことは知らない。
ただそれだけなのだ。
そのへんにいるオジサンなのだ。
だから彼らも、
「わからないことは気軽に相談したい」と思っているし
「ざっくばらんに裏技やオススメを教えてくれないかな」と思っているのだ。
そのときに、コミュニケーションコストが高いか低いかは、かなり大切だ。
それを決めるのが、先述の「肩肘を張らないお茶目さ(てへぺろ)」なのだ。
こうしてコミュニケーション・コストが低く、かつぶっちゃけトークを教えてくれる営業マンはお客様にとっての「善き友」になれる。
まとめると、
お客様と営業マンという一線を引かないこと。
お客様はぶっちゃけトークを知りたいということ。
「てへぺろ」を使いこなすこと。
最終的には、コミュニケーションコストが低い相手になること。
これらを知り、身につけていくと「善き友」性を強化していくことができる。
続き:共謀する
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